鳥栖サテライト館 展示紹介対馬藩田代領の時代<その◆

田代領の歴史を探る第2エリア。田代のまちに文化が栄えた理由を解く鍵となる「長崎街道」のお話です。
長崎街道はオランダ商館のある長崎と小倉をつなぐ道で、“文明ロード”と呼ばれることもあるように人や物など、さまざまな文化がここを行き来しました(お菓子が伝わったことから“シュガーロード”と呼ばれることもあります)。会場では長崎街道を通り江戸へ向かったオランダ商館長ケンペルや博物学者シーボルトによる田代のまちの記録や、徳川吉宗に献上するためのゾウが歩いた話などが紹介され、当時の田代の様子を知ることができます。
豊かな田園風景が広がる田代のまちで、シーボルトが見舞われた災難…歴史上の有名人が遺した田代の記録とは、いったいどのようなものでしょう。      

 

 

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鳥栖サテライト館 展示紹介対馬藩田代領の時代<その 

展示紹介対馬藩田代領の時代<その 

 

第2 のコーナー“田代領の時代” への入口は大きな門。それを潜り抜けた先では、対馬藩田代領の成り立ちや歴史ついて映像とパネルで紹介しています。
現在の鳥栖市の東側と基山町を含む地域は1599 年に対馬藩の領地となり、派遣された代官により統治されていました。代官との関係が良好だった田代では、人々は比較的自由に産業を行い、暮らすことができていたようです。とりわけ約10 年ものあいだ副代官を務めた賀島兵介は、その寛容政策から人びとに厚い信頼を寄せられ、現在の太田山安生寺(鳥栖市田代本町)に記念碑が遺されています。また、幕末期になると田代は尊王攘夷派志士たちの、追手から逃れるための拠点としての役割を担い、高杉晋作らも訪れました。会場には代官による田代の記録『基養政鑑 』や代官所跡から出土した食器、地元の名士の家に伝わる甲冑などが展示されています。

鳥栖サテライト館 展示紹介.廛蹈蹇璽

2018年3月17日より「肥前さが 幕末維新博覧会」が始まりました。

中冨記念くすり博物館の2 階は「鳥栖サテライト館」として、鳥栖市の歴史と文化の特別展示を行っています。

 

展示紹介 .廛蹈蹇璽
サテライト会場は博物館の2 階展示室の南側、常設展のあとに設けられています。古く懐かしい鳥栖の風景写真に迎えられ、進んだ先にはのぞき穴があり、そこから、昭和時代の暮らしの様子を見ることができます。ぼーん、と低く時を告げる振り子時計や、音楽に混じる雑音さえも心地よい蓄音機。家族みんなが一心に耳を傾けた真空管ラジオなど、暮しの道具がいろいろと。子どもたちには未知の、大人たちにとっては懐かしい、在りし日の家の姿。平成である今を忘れ、時代をさかのぼった先には大きな門が待ち受けています。ここをくぐりぬけた先は第▲┘螢◆9掌融代の鳥栖、狹賃/ たじろ” の歴史のコーナーです。

サクラ(平成30年3月号)

日本の国樹であるサクラ。原産地はヒマラヤ近郊とされていますが、かなり昔から固有種としてヤマザクラ、オオシマザクラなどが自生しています。桜の語源については、この薄桃色の花が咲くのは、五穀豊穣の山のサ神(サがみ:古事記が著される以前、日本で最も敬愛されていた神の名。稲に宿る魂とされている)が里の神座(かみくら)に降りてくる前ぶれであるとされたことに由来します。サクラの葉に含まれるクマリンはポリフェノールの一種で、桜餅にも使われるように特有の香りと味が好まれる他、むくみを改善するためにも用いられます。樹皮は桜皮(オウヒ)という生薬で、咳止めや痰を切るためのくすりとされる他、華岡青洲(江戸時代、世界で初めて全身麻酔での手術を成功させた紀州の医師)が創った「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」には、解熱や収れん作用を目的に配合されています。味だけでなく、目も楽しませてくれて、しかも薬効があるサクラ。日本を象徴する木とされる所以は、春を彩る美しさだけではなさそうです。

シロガラシ(平成30年3月号)

春、田畑に広がる黄色の花畑。その花々を見てなんとなく犧擇硫”と呼んだりもしますが、菜の花はアブラナ属アブラナ科植物の総称で、アブラナやカラシナ、シロガラシ、キャベツなどたくさんの種類があります。その中でもシロガラシはタネを生薬、白芥子/ビャクガイシといい、健胃や鎮咳、去痰などに利用します。また、粉末にし、湯で練ったものを消炎薬として貼り薬にすることも。しかし、私たちになじみ深いのはこのタネを酢漬けにし、塩と砂糖で味を調えたマスタード。さわやかな酸味とほのかな辛みで肉や魚の味を引き立たせるだけでなく、タネと 酢の効果により消化促進も期待でき ます。じつはシロガラシのタネは今 が蒔きどき。6月頃にはタネが収穫 できるので、育てるところから、 マスタード作りに挑戦してみては?
生薬名/薬用部位 白芥子/種子 薬効 健胃・鎮咳・去痰・消炎

カカオ(平成30年2月号)

人類が初めてカカオを口にしたのは、 約4000年前のことと云われています。古代メソアメリカ(メキシコおよび中央アメリカ北西部)での栽培がはじまりとされ、たくさんの実をつけるカカオは豊穣の象徴として神々にも捧げられました。日本にチョコレートが伝えられたのは江戸時代のこと。1797年、長崎円山町の遊女の買い品目録に「しょくらあと六つ」の記載が残されており、出島に暮らすオランダ商人からもらったものだと考えられています。1877年(明治10年)、日本で初めてチョコレートの加工、製造販売を始めたのが東京・両国の米津風月堂(現在の東京風月堂)です。西洋文化が次々にもたらされた明治時代において、チョコレートも文明開化のシンボルの一つで、ここから日本のチョコレートの歴史が歩み始めることになりました。甘くて美味しいチョコレート。でも、注目すべきはカカオの優れた薬効成分です。メソアメリカの人々は、さまざまな薬草とカカオを組み合わせては、歯痛、炎症、強壮、解熱などの治療に用いたとされています。カカオに含まれる成分でよく知られているのが抗酸化作用(老化防止)のあるポリフェノールですが、その他にもカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ミネラル分や食物繊維も豊富で、心臓病、感染症、冷え症、便秘、リラックス効果など、カカオは心身の健康を支えてくれます。

アネモネ(平成30年2月号)

2月に入るころから花屋で見かけるアネモネの花。赤、ピンク、白。藍色や紫と、とりどりの色を目にすると、春の近づきを感じます。アネモネの花は風が吹くときにしか咲かないという言い伝えがあり、属名のAnemoneはギリシャ語のanemos(風)に由来するもの。地中海沿岸のヨーロッパ原産で、古代のギリシャやローマでは、アネモネは花冠をつくるための花として知られていました。また、手折った時に出る汁液に触れると、炎症や水疱などを起こす毒草でもあります。古い書物には薬草として紹介されていることもありますが、効能は 定かではありません。 中世のイタリアでは、十字軍の遠征で戦死した 兵士を弔うため、聖地の土が持ち帰られました。 彼らの亡骸を葬ったその土からは赤いアネモネ が芽生え、その花を「キリストの血」になぞら えたことから、ヨーロッパ各地に広がって いったのだそうです。神話や聖書にも多く 登場するアネモネ。その花には、いろいろ な物語が隠されているようです。
有毒成分:汁液 毒性
作用:局所刺激(発赤・発疱・化膿)

フクジュソウ(平成30年1月号)

フクジュソウ(福寿草)は、日本、朝鮮半島、中国東北部などに自生するキンポウゲ科の植物。厳しい寒さの中で咲く、黄金色の花を小判に見立て、また、長く花を咲かせることから、福と寿命の意味を含めて「福寿草」と名付けられたといいます。別名、元旦草(がんたんそう)、朔日草(ついたちそう)とも呼ばれます。江戸時代から福寿草はめでたい花とされ、現代でも梅や松、南天などとともに寄せ植えなどにされるお正月を祝う縁起物です。また、飾りとされるだけでなく、福寿草の根は福寿草根(ふくじゅそうこん)という生薬で、強心、利尿を目的に用いられます、しかし、民間薬とするには全草にステロイド強心配糖体シマリンやアドニリドを含む劇薬なので、誤飲すると嘔吐・痙攣・呼吸麻痺などの中毒症状が出るため扱いには注意を要します。寒さにふるえながら、春を待ちわびたいにしえの人々。凍土の中で年を越し、開花の時をじっと待つこの花に、どれだけ勇気と希望をもらったことか…。

カタクリ(平成30年1月号)

 

雪融けとともに茎葉を伸ばし、薄紫や桃色の花を咲かせるカタクリ(片栗)。開花期間は2週間ほどで、春の終わりには姿を消してしまうことから「スプリングエフェメラル(春の妖精)」と呼ばれています。カタクリの名はクリの子葉(果実)の1片に似ていることからつけられました。片栗粉とはカタクリの鱗茎をすり潰し、水にさらして取り出したでん粉のことをいい、くすりとしてすり傷やできもの、湿疹に外用したり、下痢や胃腸炎、滋養のくすりとして湯に溶き内服したり、錠剤・丸剤の賦形剤としても利用されています。ただし、現在、市販されている片栗粉のほとんどはジャガイモなどのイモ類から加工されたものです。 九州では熊本県のみに分布し、絶滅の恐れがあることから天然記念物に指定されている群生地や、人工的に殖やされ 観光名所となっているところもあります。 今年の春も、次の春も―――。妖精たちが 目を覚ますことができますように。
薬用部:鱗茎
薬 効:(外)すり傷・できもの・湿疹 (内)下痢・滋養
 

ナンテン(平成29年12月号)

南天は中国原産の植物で、秋から冬に かけて赤色の丸い実をつけます。赤い 実には厄除けの効果があると信じられていたことに加えて、 ナンテンの名が「難を転じる」に通じるので、古くから縁起 の良い木とされてきました。また、家が栄える、お金持ちに なれる、悪い夢を見た時にはすぐに南天の木を見れば正夢に はならないなどの意味もあって、庭木としてとても好まれま した。風水では母屋よりも高くなる木を庭に植えるのは凶と されているため狷颪鯏召犬襪翰益がある瓩箸いζ酖靴魑 門や玄関先に植えることで、邪気の進入を拒み、病魔や厄を 追い払ってくれると云われています。昭和時代やそれ以前に 建てられた家屋では、お手洗いの外側に植わっているのを見 かけます。それは、不浄のものとされていたお手洗いを清め るためという言い伝えに加えて、南天には寄生虫や細菌等の 生育を抑える成分が含まれているからです。冷蔵庫や防腐剤 もなかった時代、生ものやお供えをしてからいただく ものなどに添えられた南天の葉。その名残りは、 会席料理、仕出し弁当、お赤飯などに今も 見られます。

フユイチゴ(平成29年12月号)

生薬名/薬用部/効能

寒苺葉/葉・全草/強壮   寒苺根/根/胃痛・虫垂炎

茶色く枯れた草や落葉の陰で11、12月頃に熟すフユイチゴ。多くのキイチゴは夏に熟しますが、冬に熟すことからこの名が付けられ、別名「寒苺/カンイチゴ」とも呼ばれます。茎にトゲはなく、つやのある葉はハート形にも見え、赤いガラス玉のような実がなっています。古い書物によればフユイチゴは「体を健やかにし、力を増して、老化を防止する」薬用植物。葉、または全草を生薬、寒苺葉/カンバイヨウといい、強壮効果があることから肺結核の治療に利用されます。そして寒苺根/カンバイコンと呼ば れる根も、胃痛や虫垂炎などに。関東より西では、山道のわきなどで ふつうに見られる小低木。この時期 の果実は真っ赤に熟し、まさに食べごろです。生のまま摘んでみれば、今だけの甘酸っぱさ。ジャムや 果実酒にしておけば、冬の間、ゆっくり味わうことができますよ。

ヒシ(平成29年11月号)

ヒシは池や沼に育つ水草です。水底に沈んだ種子から水面へと茎が伸び、その先にたくさんの菱形の葉が集まり水面を覆います。その姿は水面を彩る打ち上げ花火のようです。白く小さな花が咲くのは夏。花がしぼみ、水にもぐったあとに結ばれるのがヒシの実です。名前の由来には諸説あるようで、実の形が忍者の武器である撒菱(まきびし)に似ているからとか、葉がひし形だからとか。福岡や佐賀、北海道では実をそのまま、または、茹でたり蒸したりして食べる地域がありますがヒシの実を食べる習慣は一般的ではありません。しかし、食用としての歴史は古く、万葉集にヒシを摘む様子が詠われ、江戸時代の本草(薬物)書にはくすりとなることも書かれています。ヒシの実は生薬名を菱実(リョウジツ)と言い、民間で滋養強壮、鎮痛、健胃などを目的とした使用が受け継がれています。大きなたらいの船に乗り込み、ヒシの実を摘む。ちゃぷちゃぷ、ぎぃぎぃ。そんな音が、青く澄んだ秋空に響き渡ります。

キキョウ(平成29年11月号)

薬用部分    根と根茎(竜胆) 薬効        苦味健胃作用、消炎、解毒

秋の野山に咲く青紫色のリンドウ。10月ごろから阿蘇周辺で咲くことから熊本県では県の花に、長野県でも県花や家紋などに描かれ、私たちになじみ深い花です。生薬は竜胆/りゅうたんと言われ、古くから苦味健胃、消炎のくすりとして処方されています。名前の由来は苦味健胃薬としても知られる熊胆/ゆうたん(クマの胆汁)より苦いことから、最上の意味を表す竜の字を充て、中国名の音読みのリュウタンからリンドウに転訛したといわれています。近頃では 野山も整備され、自生するリンドウ も減ってきました。 苦い薬草ではありますが、可憐な花が 失われていくのはさみしいものです。

センニンソウ(平成29年10月号)

夏が終わったことを告げてくれるセンニンソウ。林や草地の日当たりの良い場所で、樹木などに蔓を絡ませた姿を見ることができます。センニンソウの名は、果実に生える綿毛を仙人の髭に見立てたもの。センニンソウの細い根は「威霊仙(イレイセン)」という生薬で、痛み止めや扁桃腺炎の症状を和らげます。民間療法として伝えられているのは、生葉を擂り潰して片方の手首の内側に貼れば扁桃腺炎が治まるという、ちょっと不思議な用い方です。「仙人」という名前の印象から、不老不死や長寿の効果が期待できる薬草だと思われがちですが、毒性があるため馬も食べないとされ、ウマクワズ(馬食わず)と呼ばれてしまうほど。人の痛みを癒す力に、毒も有するセンニンソウ。樹木に覆い被さるまでに蔓を伸ばすのは、仙人のような威霊の力を蓄えようとしているのかもしれません。

カボチャ(平成29年10月号)

生薬名:南瓜蔕/ナンカテイ  南瓜子/ナンカシ・南瓜/ナンカ

薬用部:へた、種子、果実   用 途:駆虫、消炎、鎮痛など

仮装をした人たちとオレンジ色のランタン。日本でも人気となった”ハロウィン”では「カボチャ」が欠かすことができません。

カボチャが日本に伝わったのは約450年前。豊後の国(現在の大分県)にカンボジアを経由して持ち込まれたところから、カンボジアが変化して「カボチャ」の名になりました。因みに関東ではトウナス、関西ではナンキン、九州ではボウブラといった方言の呼び名もあります。カボチャのヘタやタネ、果実は生薬となり、虫下しや炎症止めとして使用されています。虫下しの効果を高めるには榔子/びんろうじ(ヤシ科の植物の種)の煎じ液と服用するとよいそうです。

冬至にカボチャを食べるという風習が江戸時代から伝わっていますが、これは寒い冬に不足しがちなビタミンを長く保存できるカボチャで補おうという先人 たちの知恵。今年の冬至は12月22日。 その日はまだまだ先ですが、冷え込む日 の夜ごはんには温かいカボチャシチュー が食べたくなりますね。

オナモミ(平成29年9月号)

オナモミは夏から秋にかけて黄緑色の花を咲かせ、その後、結ばれるのが、あのトゲトゲの実。野山に出掛け、帰宅してみたら、服にくっついていた、そんな経験をされた人もいらっしゃるのではないでしょうか。"ひっつき(くっつき)虫瓩箸盡討个譴襯ナモミの実は、表面がかぎ状のトゲで覆われているため、何かにひっかかったり、動物のからだにくっついたり。
そうして、違う場所へ運ばれることで、生育地を広げていきました。この実は生薬名を蒼耳子(そうじし)といい、頭痛や発熱などの症状に処方されるほか、搾って得られる油が皮膚病にも用いられます。日本にはアジア大陸より稲作とともに渡来した歴史の古い植物ですが、今、新たな外来種におされ、姿を消しつつあるそうで…。
新秋の風が心地よいこの季節、里山を歩いてみれば、無数のトゲに覆われたひっつき虫に出合えるかもしれません。

カワラナデシコ(平成29年9月号)

生薬名:瞿麦/クバク・瞿麦子/クバクシ 薬用部:全草・種子 用途:消炎・利尿

朝な夕なに爽やかな風を感じる今日この頃。なぜなら暦の上ではもう秋。『萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴朝がほの花』 これは山上憶良が秋の野に咲く花々を謳った歌、秋の七草の歌です。中でも「なでしこ」は、清らかで美しい女性を表す言葉、狢舅舵鏤”としてもおなじみ。その名はあまりに可愛らしく、触れる際に子どもを撫でるかのような感情になってしまうので「撫し子」とつけられたといいます。一般的にナデシコとは初夏から夏にかけて白やピンクの花を咲かせるカワラナデシコのこと。全草と種子はそれぞれくすりになり、消炎や利尿の効果があります。 本州の南に自生しているのはカワラナデシ コ。北にはそれより少し大きなエゾカワラ ナデシコが見られます。 山野にはそろそろ秋の気配。エゾカワラナ デシコの花もいつか愛でてみたいものです。

ベンケイソウ(平成29年8月号)

花びらの先端がほんのりと紅色のベンケイソウ。小さな花が無数に集まって咲く姿は可憐で慎ましやかですが、強そうな名前通りベンケイソウには夏の暑さ、冬の厳しい寒さにも負けない力が備わっています。

古くに中国から伝えられ、初めは「生きる草」という言葉が転じた「伊岐久佐(いきくさ)」と呼ばれていたといいます。後に、平安時代末に登場する武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)の武勇伝が伝わると、その強さになぞらえて、ベンケイソウと名付けられました。肉厚な葉は生薬名を景天(けいてん)といい、腫れ物や創傷に処方され、止血の効果も。葉はちぎった後にも、しばらくしおれず、表向きにして土の上に置いておくと、葉脈の末端から新しい芽が出るほどのたくましさ。

源義経の傍で命を燃やした弁慶のように、力強く生きるベンケイソウ。淡桃色の花は夏の暑さにうなだれることなく、今、花盛りです。

フラックス(平成29年8月号)

薬用部:茎・種子  用 途:緩下作用・殺菌・鎮静など

夏に青や白、桃色の花をたくさん咲かせるハーブ、フラックス。この花が終わると、丸い実の中には黄褐色の平たいタマゴ形のタネができます。このタネから抽出される油はフラックスシードオイル、亜麻仁/あまに油などと呼ばれ、油絵を描くときに絵の具ののびをよくするための溶き油としてつかわれています。また、生活習慣病の予防やアレルギーの緩和に効果があると注目を浴びている食用油でもあります。 フラックスはもともと繊維の原料としてつかわれてきた植物です。茎からとれる強い繊維で紡いだ糸やリネンと呼ばれる布は、紀元前5000年代には古代エジプト人がミイラを包むために使用したのだとか…。また、イエス・キリストの亡骸を包んだの もリネンだといわれています。

長きにわたって人々に愛され続けるぬくも りある布。それはきっと、良き日の思い出も 一緒に包んでくれるからなのでしょう。

 

アオノリュウゼツラン(平成29年7月号)

何十年も葉を茂らせる常緑の多年草、アオノリュウゼツラン。長さ2〜3mもの剣状の葉がロゼット状(地中から放射状に葉が広がる形状)に生えるアガベ(乾燥地帯に生息する多肉植物)の仲間です。先がとがった肉厚の葉は4mもの径で広がり、縁には鋭いとげがあります。この植物を初めて見た日本人は、花は蘭のようで、龍が存在するならこんな舌をしているのではないかと思い、”青の龍舌蘭”と名付けたといいます。花が咲くのは30〜70年に一度だけ。ある日、突然、株の真ん中から花茎が10mほど伸び、次々に黄色の花を咲かせます。その花数は数千個にもなるのだとか。世紀の植物(century plant)や万年蘭、そんな別名を持つのは、花茎の長さに太さも巨大な上、開花まで50〜70年もの非常に長い歳月を要するからです。葉や茎から得られる抽出物に収れん、抗酸化、免疫力をj改善する作用があります。見事な花を咲かせたら、アオノリュウゼツランの命のおわり。しかし、枯死する寸前に根元に子株をつくり、その命はしっかり受け渡されます。

ウイキョウ(平成29年7月号)

生薬名 : 茴香/ウイキョウ 薬用部 : 果実 用 途 : 健胃整腸・鎮痛・去痰など

歴史上最古の作物のひとつといわれるウイキョウ(ハーブ名:フェンネル)。葉は黄緑色で糸のように細く、夏から秋にかけ、黄色い小さな花が咲きます。種子を天日干したものは「茴香/ウイキョウ」という生薬で、香りは甘く、噛めばほのかな苦み。胃の調子を調える効果があり、市販の胃薬にも処方されています。また、魚料理の臭み消しやお酒の香りづけ、カレーのスパイスに、葉や茎も野菜として親しまれています。 インドでは食後、口臭予防や消化促進のために「ソーンフ」というお菓子を食べるとか。これは炒ったウイキョウの種子を砂糖でコーティングしたもので、日本でいう口直しのガムのような役割。カラフルに色づけ されたものを料理店などでも見かけることが ありますが…どんな味がするのか、とても気になる所です。

 

カノコソウ(平成29年6月号)

茎の上部が枝分かれして散房状に多数の花を咲かせるカノコソウ。 
少し湿った山地に生育し、花色は白や薄紅で、素朴でありながら上品さも兼ね揃えています。幕末の植物学者、飯沼慾斎(いいぬまよくさい)が著した「草木図説 / そうもくずせつ / 1856年刊行」には、「カノコソウ、名ハルオミナエシ。伊吹山中多く自生す」と記され、今でも伊吹山(滋賀県米原市)の頂から岐阜県側に下る付近に、たくさんのカノコソウを見ることができます。秋になり地上部が枯れたら生薬となる根茎、吉草根の採取の時季。掘り取った根は、ひげ根をより分け、水洗いして天日で干してから用います。ストレスや神経系の興奮を抑える効き目があります。精油を含み、特有のくせのある香りがする吉草根。μこの芳香をよい香りと感じたら、情緒が不安定になっているかもしれないのだとか…。眠れなかったり、不安に感じりした時、カノコソウが力を貸してくれそうです。

キクニガナ(平成29年6月号)

生薬名:菊苣/キクキョ 用 部:根・根茎・全草 用 途:抗菌・収れんなど

太陽が昇るとともにつぎつぎに咲きだすキクニガナ。しかし、その薄青色の花の寿命ははかなくも一日限り。キクニガナはヨーロッパでは「アンディーブ」または、「チコリ」という名で古くから栽培されてきた野菜。食用にする新芽は白菜のような形でシャキシャキとした歯ごたえと強い苦みが特徴ですが、苦みを抑えるために日光に当てずに育てられています。近ごろは日本でも栽培されるようになりましたが、まだまだ販売されているところが限られているようです。

全草を煎じたものは腎炎や気管支炎に。根は焙煎するとコーヒーの代用にもなり、1806年にナポレオンが大陸封鎖令を発した際にはコーヒー豆の代用としてチコリコーヒーが飲まれたといわれています。 ノンカフェインで飲みやすく、痛風や便秘を 改善する効果も。

一日だけのはかない花を愛でたなら、今度 は苦い一杯も味わってみたいものですね。

シュンギク(平成29年5月号)

似た花を咲かせるシュンギク。特徴は鼻に抜ける強い香りと食べた時の苦味。原産地はイタリアやトルコなどの地中海沿岸地方で、日本に伝わったのは15世紀の終わり頃とされています。既に江戸時代には野菜として栽培されていたことは、宮崎安貞(みやざきやすさだ) と貝原益軒(かいばらえきけん)が編纂した「農業全書」よりうかがい知ることができます。アジアでも一部の地域のみで食べられ、西洋では食材としてあまり好まれません。しかし、栄養価が高く、カルシウムは牛乳以上。豊富なミネラル類は貧血や骨粗しょう症を予防し、香り成分は自律神経に作用することで、食欲や消化吸収を促します。さらに、咳を鎮める効果もあり、喉の風邪をこじらせた時にはシュンギクの煎じ汁を飲むとよいそうです。健康維持に有効な成分がたくさん含まれているシュンギク。春から夏への移ろいを知らせてくれるあの独特の香りにも癒しの力が―。