鳥栖サテライト館 展示紹介「鳥栖まるかじりマップ」

ここまで鳥栖のまちを作り上げた先人たちの歴史を振り返ってきました。会場の「鳥栖まるかじりマップ」では、市民におなじみの名所を知れるだけでなく、鳥栖市の「今」と「むかし」を地図上に眺めることができます。ショッピングモール、スポーツ施設などの新しい景色と、長崎街道沿いに残る史跡や街並みなど、むかしの景色。そして美しい自然。これらが心地よく共存しているのが鳥栖という町です。

この地図に記されているのは、先人たちが知恵を絞り、この町をより良くしようと努力を重ねた歴史。訪れてみればこの鳥栖を誇りに思えるだけでなく、新たな魅力も再発見できることでしょう。そのほか、幕末維新博覧会の他会場の情報や佐賀県内の観光地なども紹介しています。

 

 

11月号(最新号)はこちらよりダウンロードできます。

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鳥栖サテライト館、最後を締めくくるコーナーは、私たちの大切な足、鉄道です。くすり産業と櫨蝋で得たたくわえは鉄道産業成長の礎となり、明治21 年に九州鉄道が開通、翌年には鳥栖駅が開業し、鳥栖は瞬く間に鉄道の町へと発展を遂げました。
これにより駅周辺はにぎわいを見せ、人口も増加。結果、明治37 年に鳥栖駅は駅幅を拡げ、現在の場所に移転されることとなります。会場では当時の鳥栖駅や周辺の写真など、懐かしい鳥栖の風景をご覧いただけます。
現在、土・日・祝日限定で特別展「鉄道のまち鳥栖を体感!」を開催しています。、鉄道カフェ門トス(鳥栖市)所蔵の貴重資
料も展示。子どもも大人も楽しめる企画となっておりますのでこの機会にお立ち寄りください!

鳥栖サテライト館 展示紹介せ唆箸糧展とひろがり <映像コーナー>

映像コーナーでははるくんとみらいちゃんが江戸時代にタイムスリップし、当時の産業をリポートしてくれます(約7分)。
ある日、お得先さんの家の縁側に売薬さんを発見したふたり。売薬さんとお得意さんの会話に耳を傾けつつ、売薬さんの仕事を見守ります。彼らの会話の内容は…そして売薬さんの仕事はどのようなものだったのでしょうか?
その他にも櫨蝋(はぜろう)や貼り薬の発展に一役買った先人たちも登場。彼らの「時代を変えよう」という強い情熱を感じずにはいられません。

鳥栖サテライト館 展示紹介産業の発展とひろがり <櫨蝋の話>

田代領で発展した2つの産業、配置売薬ともう一つが櫨蝋
(はぜろう)です。櫨蝋とはハゼの実から採取される蝋のこと。会場内では櫨蝋を作るときに利用された皿やハゼの実などを展示しています。従来の油を使った行燈(あんどん)から、櫨蝋のロウソクへと改良することでより明るい光になるのではないか…櫨蝋の新たな可能性を見い出したのは田代の松田勘四郎と犬丸市之助でした。松田氏は田代領にハゼの実を持ち込んだ最初の人物と言われており、犬丸氏は筑後・田主丸から買い付けたハゼの苗の育て方を人々に熱心に教えました。ハゼ畑が増え、領内や佐賀藩において櫨蝋作りが盛んになると幕末には海外にも輸出されるようになりました。佐賀藩では櫨蝋で得た利益でオランダ製の船を買った話も残されています。

鳥栖サテライト館 展示紹介産業の発展とひろがり<膏薬の話>

サテライト会場、第3 エリアは「産業の発展とひろがり」。田代領で発展した2つの産業、配置売薬と櫨蝋/ はぜろうのコーナーです。田代領における代官による比較的緩やかな統治とさまざまな文化が行き交う長崎街道の存在は地元の産業を領地外へ発展させようという人々のチャレンジ意欲を鼓舞しました。会場には田代売薬の発展に大きくかかわった<膏薬>に関する資料が展示されています。

膏薬とは生薬を油で煮詰めて煉ったもので、患部に直接塗ったり、紙や布に塗りのばしたものを貼付したりするくすりです。展示の貝殻膏/ かいがらこうは膏薬板と呼ばれる陶製の板の上で煉った膏薬をハマグリの貝殻に詰めた塗り薬。しもやけやあかぎれに効く人気商品で、昭和の中頃まで製造されていました。貝殻を容器に用いたことに驚く世代、懐かしむ世代。あなたは貝殻膏にどんな思いを抱きますか?

鳥栖サテライト館 展示紹介対馬藩田代領の時代<その◆

田代領の歴史を探る第2エリア。田代のまちに文化が栄えた理由を解く鍵となる「長崎街道」のお話です。
長崎街道はオランダ商館のある長崎と小倉をつなぐ道で、“文明ロード”と呼ばれることもあるように人や物など、さまざまな文化がここを行き来しました(お菓子が伝わったことから“シュガーロード”と呼ばれることもあります)。会場では長崎街道を通り江戸へ向かったオランダ商館長ケンペルや博物学者シーボルトによる田代のまちの記録や、徳川吉宗に献上するためのゾウが歩いた話などが紹介され、当時の田代の様子を知ることができます。
豊かな田園風景が広がる田代のまちで、シーボルトが見舞われた災難…歴史上の有名人が遺した田代の記録とは、いったいどのようなものでしょう。 

鳥栖サテライト館 展示紹介対馬藩田代領の時代<その 

展示紹介対馬藩田代領の時代<その 

 

第2 のコーナー“田代領の時代” への入口は大きな門。それを潜り抜けた先では、対馬藩田代領の成り立ちや歴史ついて映像とパネルで紹介しています。
現在の鳥栖市の東側と基山町を含む地域は1599 年に対馬藩の領地となり、派遣された代官により統治されていました。代官との関係が良好だった田代では、人々は比較的自由に産業を行い、暮らすことができていたようです。とりわけ約10 年ものあいだ副代官を務めた賀島兵介は、その寛容政策から人びとに厚い信頼を寄せられ、現在の太田山安生寺(鳥栖市田代本町)に記念碑が遺されています。また、幕末期になると田代は尊王攘夷派志士たちの、追手から逃れるための拠点としての役割を担い、高杉晋作らも訪れました。会場には代官による田代の記録『基養政鑑 』や代官所跡から出土した食器、地元の名士の家に伝わる甲冑などが展示されています。

鳥栖サテライト館 展示紹介.廛蹈蹇璽

2018年3月17日より「肥前さが 幕末維新博覧会」が始まりました。

中冨記念くすり博物館の2 階は「鳥栖サテライト館」として、鳥栖市の歴史と文化の特別展示を行っています。

 

展示紹介 .廛蹈蹇璽
サテライト会場は博物館の2 階展示室の南側、常設展のあとに設けられています。古く懐かしい鳥栖の風景写真に迎えられ、進んだ先にはのぞき穴があり、そこから、昭和時代の暮らしの様子を見ることができます。ぼーん、と低く時を告げる振り子時計や、音楽に混じる雑音さえも心地よい蓄音機。家族みんなが一心に耳を傾けた真空管ラジオなど、暮しの道具がいろいろと。子どもたちには未知の、大人たちにとっては懐かしい、在りし日の家の姿。平成である今を忘れ、時代をさかのぼった先には大きな門が待ち受けています。ここをくぐりぬけた先は第▲┘螢◆9掌融代の鳥栖、狹賃/ たじろ” の歴史のコーナーです。

サクラ(平成30年3月号)

日本の国樹であるサクラ。原産地はヒマラヤ近郊とされていますが、かなり昔から固有種としてヤマザクラ、オオシマザクラなどが自生しています。桜の語源については、この薄桃色の花が咲くのは、五穀豊穣の山のサ神(サがみ:古事記が著される以前、日本で最も敬愛されていた神の名。稲に宿る魂とされている)が里の神座(かみくら)に降りてくる前ぶれであるとされたことに由来します。サクラの葉に含まれるクマリンはポリフェノールの一種で、桜餅にも使われるように特有の香りと味が好まれる他、むくみを改善するためにも用いられます。樹皮は桜皮(オウヒ)という生薬で、咳止めや痰を切るためのくすりとされる他、華岡青洲(江戸時代、世界で初めて全身麻酔での手術を成功させた紀州の医師)が創った「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」には、解熱や収れん作用を目的に配合されています。味だけでなく、目も楽しませてくれて、しかも薬効があるサクラ。日本を象徴する木とされる所以は、春を彩る美しさだけではなさそうです。

シロガラシ(平成30年3月号)

春、田畑に広がる黄色の花畑。その花々を見てなんとなく犧擇硫”と呼んだりもしますが、菜の花はアブラナ属アブラナ科植物の総称で、アブラナやカラシナ、シロガラシ、キャベツなどたくさんの種類があります。その中でもシロガラシはタネを生薬、白芥子/ビャクガイシといい、健胃や鎮咳、去痰などに利用します。また、粉末にし、湯で練ったものを消炎薬として貼り薬にすることも。しかし、私たちになじみ深いのはこのタネを酢漬けにし、塩と砂糖で味を調えたマスタード。さわやかな酸味とほのかな辛みで肉や魚の味を引き立たせるだけでなく、タネと 酢の効果により消化促進も期待でき ます。じつはシロガラシのタネは今 が蒔きどき。6月頃にはタネが収穫 できるので、育てるところから、 マスタード作りに挑戦してみては?
生薬名/薬用部位 白芥子/種子 薬効 健胃・鎮咳・去痰・消炎

カカオ(平成30年2月号)

人類が初めてカカオを口にしたのは、 約4000年前のことと云われています。古代メソアメリカ(メキシコおよび中央アメリカ北西部)での栽培がはじまりとされ、たくさんの実をつけるカカオは豊穣の象徴として神々にも捧げられました。日本にチョコレートが伝えられたのは江戸時代のこと。1797年、長崎円山町の遊女の買い品目録に「しょくらあと六つ」の記載が残されており、出島に暮らすオランダ商人からもらったものだと考えられています。1877年(明治10年)、日本で初めてチョコレートの加工、製造販売を始めたのが東京・両国の米津風月堂(現在の東京風月堂)です。西洋文化が次々にもたらされた明治時代において、チョコレートも文明開化のシンボルの一つで、ここから日本のチョコレートの歴史が歩み始めることになりました。甘くて美味しいチョコレート。でも、注目すべきはカカオの優れた薬効成分です。メソアメリカの人々は、さまざまな薬草とカカオを組み合わせては、歯痛、炎症、強壮、解熱などの治療に用いたとされています。カカオに含まれる成分でよく知られているのが抗酸化作用(老化防止)のあるポリフェノールですが、その他にもカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ミネラル分や食物繊維も豊富で、心臓病、感染症、冷え症、便秘、リラックス効果など、カカオは心身の健康を支えてくれます。

アネモネ(平成30年2月号)

2月に入るころから花屋で見かけるアネモネの花。赤、ピンク、白。藍色や紫と、とりどりの色を目にすると、春の近づきを感じます。アネモネの花は風が吹くときにしか咲かないという言い伝えがあり、属名のAnemoneはギリシャ語のanemos(風)に由来するもの。地中海沿岸のヨーロッパ原産で、古代のギリシャやローマでは、アネモネは花冠をつくるための花として知られていました。また、手折った時に出る汁液に触れると、炎症や水疱などを起こす毒草でもあります。古い書物には薬草として紹介されていることもありますが、効能は 定かではありません。 中世のイタリアでは、十字軍の遠征で戦死した 兵士を弔うため、聖地の土が持ち帰られました。 彼らの亡骸を葬ったその土からは赤いアネモネ が芽生え、その花を「キリストの血」になぞら えたことから、ヨーロッパ各地に広がって いったのだそうです。神話や聖書にも多く 登場するアネモネ。その花には、いろいろ な物語が隠されているようです。
有毒成分:汁液 毒性
作用:局所刺激(発赤・発疱・化膿)

フクジュソウ(平成30年1月号)

フクジュソウ(福寿草)は、日本、朝鮮半島、中国東北部などに自生するキンポウゲ科の植物。厳しい寒さの中で咲く、黄金色の花を小判に見立て、また、長く花を咲かせることから、福と寿命の意味を含めて「福寿草」と名付けられたといいます。別名、元旦草(がんたんそう)、朔日草(ついたちそう)とも呼ばれます。江戸時代から福寿草はめでたい花とされ、現代でも梅や松、南天などとともに寄せ植えなどにされるお正月を祝う縁起物です。また、飾りとされるだけでなく、福寿草の根は福寿草根(ふくじゅそうこん)という生薬で、強心、利尿を目的に用いられます、しかし、民間薬とするには全草にステロイド強心配糖体シマリンやアドニリドを含む劇薬なので、誤飲すると嘔吐・痙攣・呼吸麻痺などの中毒症状が出るため扱いには注意を要します。寒さにふるえながら、春を待ちわびたいにしえの人々。凍土の中で年を越し、開花の時をじっと待つこの花に、どれだけ勇気と希望をもらったことか…。

カタクリ(平成30年1月号)

 

雪融けとともに茎葉を伸ばし、薄紫や桃色の花を咲かせるカタクリ(片栗)。開花期間は2週間ほどで、春の終わりには姿を消してしまうことから「スプリングエフェメラル(春の妖精)」と呼ばれています。カタクリの名はクリの子葉(果実)の1片に似ていることからつけられました。片栗粉とはカタクリの鱗茎をすり潰し、水にさらして取り出したでん粉のことをいい、くすりとしてすり傷やできもの、湿疹に外用したり、下痢や胃腸炎、滋養のくすりとして湯に溶き内服したり、錠剤・丸剤の賦形剤としても利用されています。ただし、現在、市販されている片栗粉のほとんどはジャガイモなどのイモ類から加工されたものです。 九州では熊本県のみに分布し、絶滅の恐れがあることから天然記念物に指定されている群生地や、人工的に殖やされ 観光名所となっているところもあります。 今年の春も、次の春も―――。妖精たちが 目を覚ますことができますように。
薬用部:鱗茎
薬 効:(外)すり傷・できもの・湿疹 (内)下痢・滋養
 

ナンテン(平成29年12月号)

南天は中国原産の植物で、秋から冬に かけて赤色の丸い実をつけます。赤い 実には厄除けの効果があると信じられていたことに加えて、 ナンテンの名が「難を転じる」に通じるので、古くから縁起 の良い木とされてきました。また、家が栄える、お金持ちに なれる、悪い夢を見た時にはすぐに南天の木を見れば正夢に はならないなどの意味もあって、庭木としてとても好まれま した。風水では母屋よりも高くなる木を庭に植えるのは凶と されているため狷颪鯏召犬襪翰益がある瓩箸いζ酖靴魑 門や玄関先に植えることで、邪気の進入を拒み、病魔や厄を 追い払ってくれると云われています。昭和時代やそれ以前に 建てられた家屋では、お手洗いの外側に植わっているのを見 かけます。それは、不浄のものとされていたお手洗いを清め るためという言い伝えに加えて、南天には寄生虫や細菌等の 生育を抑える成分が含まれているからです。冷蔵庫や防腐剤 もなかった時代、生ものやお供えをしてからいただく ものなどに添えられた南天の葉。その名残りは、 会席料理、仕出し弁当、お赤飯などに今も 見られます。

フユイチゴ(平成29年12月号)

生薬名/薬用部/効能

寒苺葉/葉・全草/強壮   寒苺根/根/胃痛・虫垂炎

茶色く枯れた草や落葉の陰で11、12月頃に熟すフユイチゴ。多くのキイチゴは夏に熟しますが、冬に熟すことからこの名が付けられ、別名「寒苺/カンイチゴ」とも呼ばれます。茎にトゲはなく、つやのある葉はハート形にも見え、赤いガラス玉のような実がなっています。古い書物によればフユイチゴは「体を健やかにし、力を増して、老化を防止する」薬用植物。葉、または全草を生薬、寒苺葉/カンバイヨウといい、強壮効果があることから肺結核の治療に利用されます。そして寒苺根/カンバイコンと呼ば れる根も、胃痛や虫垂炎などに。関東より西では、山道のわきなどで ふつうに見られる小低木。この時期 の果実は真っ赤に熟し、まさに食べごろです。生のまま摘んでみれば、今だけの甘酸っぱさ。ジャムや 果実酒にしておけば、冬の間、ゆっくり味わうことができますよ。

ヒシ(平成29年11月号)

ヒシは池や沼に育つ水草です。水底に沈んだ種子から水面へと茎が伸び、その先にたくさんの菱形の葉が集まり水面を覆います。その姿は水面を彩る打ち上げ花火のようです。白く小さな花が咲くのは夏。花がしぼみ、水にもぐったあとに結ばれるのがヒシの実です。名前の由来には諸説あるようで、実の形が忍者の武器である撒菱(まきびし)に似ているからとか、葉がひし形だからとか。福岡や佐賀、北海道では実をそのまま、または、茹でたり蒸したりして食べる地域がありますがヒシの実を食べる習慣は一般的ではありません。しかし、食用としての歴史は古く、万葉集にヒシを摘む様子が詠われ、江戸時代の本草(薬物)書にはくすりとなることも書かれています。ヒシの実は生薬名を菱実(リョウジツ)と言い、民間で滋養強壮、鎮痛、健胃などを目的とした使用が受け継がれています。大きなたらいの船に乗り込み、ヒシの実を摘む。ちゃぷちゃぷ、ぎぃぎぃ。そんな音が、青く澄んだ秋空に響き渡ります。

キキョウ(平成29年11月号)

薬用部分    根と根茎(竜胆) 薬効        苦味健胃作用、消炎、解毒

秋の野山に咲く青紫色のリンドウ。10月ごろから阿蘇周辺で咲くことから熊本県では県の花に、長野県でも県花や家紋などに描かれ、私たちになじみ深い花です。生薬は竜胆/りゅうたんと言われ、古くから苦味健胃、消炎のくすりとして処方されています。名前の由来は苦味健胃薬としても知られる熊胆/ゆうたん(クマの胆汁)より苦いことから、最上の意味を表す竜の字を充て、中国名の音読みのリュウタンからリンドウに転訛したといわれています。近頃では 野山も整備され、自生するリンドウ も減ってきました。 苦い薬草ではありますが、可憐な花が 失われていくのはさみしいものです。

センニンソウ(平成29年10月号)

夏が終わったことを告げてくれるセンニンソウ。林や草地の日当たりの良い場所で、樹木などに蔓を絡ませた姿を見ることができます。センニンソウの名は、果実に生える綿毛を仙人の髭に見立てたもの。センニンソウの細い根は「威霊仙(イレイセン)」という生薬で、痛み止めや扁桃腺炎の症状を和らげます。民間療法として伝えられているのは、生葉を擂り潰して片方の手首の内側に貼れば扁桃腺炎が治まるという、ちょっと不思議な用い方です。「仙人」という名前の印象から、不老不死や長寿の効果が期待できる薬草だと思われがちですが、毒性があるため馬も食べないとされ、ウマクワズ(馬食わず)と呼ばれてしまうほど。人の痛みを癒す力に、毒も有するセンニンソウ。樹木に覆い被さるまでに蔓を伸ばすのは、仙人のような威霊の力を蓄えようとしているのかもしれません。

カボチャ(平成29年10月号)

生薬名:南瓜蔕/ナンカテイ  南瓜子/ナンカシ・南瓜/ナンカ

薬用部:へた、種子、果実   用 途:駆虫、消炎、鎮痛など

仮装をした人たちとオレンジ色のランタン。日本でも人気となった”ハロウィン”では「カボチャ」が欠かすことができません。

カボチャが日本に伝わったのは約450年前。豊後の国(現在の大分県)にカンボジアを経由して持ち込まれたところから、カンボジアが変化して「カボチャ」の名になりました。因みに関東ではトウナス、関西ではナンキン、九州ではボウブラといった方言の呼び名もあります。カボチャのヘタやタネ、果実は生薬となり、虫下しや炎症止めとして使用されています。虫下しの効果を高めるには榔子/びんろうじ(ヤシ科の植物の種)の煎じ液と服用するとよいそうです。

冬至にカボチャを食べるという風習が江戸時代から伝わっていますが、これは寒い冬に不足しがちなビタミンを長く保存できるカボチャで補おうという先人 たちの知恵。今年の冬至は12月22日。 その日はまだまだ先ですが、冷え込む日 の夜ごはんには温かいカボチャシチュー が食べたくなりますね。

オナモミ(平成29年9月号)

オナモミは夏から秋にかけて黄緑色の花を咲かせ、その後、結ばれるのが、あのトゲトゲの実。野山に出掛け、帰宅してみたら、服にくっついていた、そんな経験をされた人もいらっしゃるのではないでしょうか。"ひっつき(くっつき)虫瓩箸盡討个譴襯ナモミの実は、表面がかぎ状のトゲで覆われているため、何かにひっかかったり、動物のからだにくっついたり。
そうして、違う場所へ運ばれることで、生育地を広げていきました。この実は生薬名を蒼耳子(そうじし)といい、頭痛や発熱などの症状に処方されるほか、搾って得られる油が皮膚病にも用いられます。日本にはアジア大陸より稲作とともに渡来した歴史の古い植物ですが、今、新たな外来種におされ、姿を消しつつあるそうで…。
新秋の風が心地よいこの季節、里山を歩いてみれば、無数のトゲに覆われたひっつき虫に出合えるかもしれません。

カワラナデシコ(平成29年9月号)

生薬名:瞿麦/クバク・瞿麦子/クバクシ 薬用部:全草・種子 用途:消炎・利尿

朝な夕なに爽やかな風を感じる今日この頃。なぜなら暦の上ではもう秋。『萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴朝がほの花』 これは山上憶良が秋の野に咲く花々を謳った歌、秋の七草の歌です。中でも「なでしこ」は、清らかで美しい女性を表す言葉、狢舅舵鏤”としてもおなじみ。その名はあまりに可愛らしく、触れる際に子どもを撫でるかのような感情になってしまうので「撫し子」とつけられたといいます。一般的にナデシコとは初夏から夏にかけて白やピンクの花を咲かせるカワラナデシコのこと。全草と種子はそれぞれくすりになり、消炎や利尿の効果があります。 本州の南に自生しているのはカワラナデシ コ。北にはそれより少し大きなエゾカワラ ナデシコが見られます。 山野にはそろそろ秋の気配。エゾカワラナ デシコの花もいつか愛でてみたいものです。

ベンケイソウ(平成29年8月号)

花びらの先端がほんのりと紅色のベンケイソウ。小さな花が無数に集まって咲く姿は可憐で慎ましやかですが、強そうな名前通りベンケイソウには夏の暑さ、冬の厳しい寒さにも負けない力が備わっています。

古くに中国から伝えられ、初めは「生きる草」という言葉が転じた「伊岐久佐(いきくさ)」と呼ばれていたといいます。後に、平安時代末に登場する武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)の武勇伝が伝わると、その強さになぞらえて、ベンケイソウと名付けられました。肉厚な葉は生薬名を景天(けいてん)といい、腫れ物や創傷に処方され、止血の効果も。葉はちぎった後にも、しばらくしおれず、表向きにして土の上に置いておくと、葉脈の末端から新しい芽が出るほどのたくましさ。

源義経の傍で命を燃やした弁慶のように、力強く生きるベンケイソウ。淡桃色の花は夏の暑さにうなだれることなく、今、花盛りです。

フラックス(平成29年8月号)

薬用部:茎・種子  用 途:緩下作用・殺菌・鎮静など

夏に青や白、桃色の花をたくさん咲かせるハーブ、フラックス。この花が終わると、丸い実の中には黄褐色の平たいタマゴ形のタネができます。このタネから抽出される油はフラックスシードオイル、亜麻仁/あまに油などと呼ばれ、油絵を描くときに絵の具ののびをよくするための溶き油としてつかわれています。また、生活習慣病の予防やアレルギーの緩和に効果があると注目を浴びている食用油でもあります。 フラックスはもともと繊維の原料としてつかわれてきた植物です。茎からとれる強い繊維で紡いだ糸やリネンと呼ばれる布は、紀元前5000年代には古代エジプト人がミイラを包むために使用したのだとか…。また、イエス・キリストの亡骸を包んだの もリネンだといわれています。

長きにわたって人々に愛され続けるぬくも りある布。それはきっと、良き日の思い出も 一緒に包んでくれるからなのでしょう。