カタクリ(平成28年4月号)

いち早く春を告げてくれるカタクリが、美しい地上の春を知るのは8年ほどの歳月を経て。 芽吹きの時を土の中でどれほど待ち侘びていることか―。 双葉でなく、初めは一葉のみ。 やっと光を浴びることのできた片葉(一葉)は、小鹿のようなまだら模様をしています。 その姿から片鹿子(カタカゴ)と呼ぶ地域もあり、和名のカタクリ(片栗)は、食用とする鱗片(りんぺん:鱗茎に見られる多肉質な葉)が栗の実の片割れに似ていることに由来するそうです。 この鱗片を精製した粉が片栗粉で、貴重な生薬として将軍家に献上されていたといいます。 紅紫色の花弁は、陽の当たる時のみ開き、曇った日や雨の日、そして夕方には閉じてしまいます。 一茎に一輪の花。 うつむき加減の花姿は、はにかむ少女のようです。 鱗片を葛湯のようにして飲めば、胃腸の調子を整え、風邪の引き始めにも効きます。 また、片栗粉には、湿疹やあせもなどの皮膚炎を和らげる効果があります。 他の花に先駆け春を歓び、清明の頃には姿を消してしまう。 そんな陽炎のようなカタクリに、また次の春にも出合えますように…。