ヨメナ(平成28年10月号)

秋の山野を彩るキク科の花々。古来よりひっくるめて野菊(ノギク)と呼ばれますが、食べることができ、野菊の中で若芽が一番おいしいのがヨメナです。野辺に限らず、道端や畔などを柔らかな薄紫色に染めるヨメナの花。ういういしい牴任里茲Δ焚”であり、狄べられる菜”ということから嫁菜と名付けられたといいます。花咲くころのヨメナを根ごと掘り上げ、乾燥させたものを解熱や止血に用いる地方もあるそうです。万葉集では「うはぎ」の名で詠まれ、その季節は春。「春日野(かすがの)に 煙(けぶり)立つ見ゆ 娘子(をとめ)らし 春野のうはぎ摘みて煮らしも(作者不明)」。乙女たちが春野に集い、摘み取ったヨメナを煮出す。その煙がたなびく景色を眺めては、万葉人たちは春の到来を歓んだことでしょう。
霞む紫の花咲くその場所を―。 憶えていよう。遠い昔をいつくしみ、春になったらヨメナ摘みへと。