カキ(平成28年11月号)

秋の風物詩の一つ、軒先に連なる吊るし柿。カキの食用としての歴史は古く、縄文時代にまでさかのぼります。今でこそ生食できる甘柿の品種は1,000を超えますが、太古の遺跡から発掘されているのは渋柿の種。今の干し柿と同じように、天日で渋みを抜いて食べられていました。 甘柿は突然変異によるものとされており、1214年に王禅寺(おうぜんじ:神奈川県川崎市)で発見されたカキ(禅寺丸柿:ぜんじまるがき)が、日本初の甘柿だったといわれています。カキの渋みはタンニンという成分。防腐、防虫、抗菌の効果があるため、古く柿渋(未熟果を擦り潰して搾汁し、発酵させ濾過したもの)は補強材として活用されました。樽や桶に塗るのはもちろんのこと、柱や床、古竹、漁網などにも。 柿渋を塗った渋紙(しぶがみ)は、綴りの表紙や籠の補強にも使われ、ものを大事にする日本人ならではの工夫だったといえます。へたは柿蔕(してい)という生薬。煎じたものを丁子や生姜とともに飲めば、しゃっくりを止める効果があり、昔はやけどやしもやけ、傷の出血などにも柿渋を用いたそうです。甘くても渋くても、その橙色は秋空に映えて―