アジサイ(平成16年6月号)

薬用部:萼(がく)  用途:解熱  原産地:日本・アジア 
幕末…長崎のオランダ商館に来ていたドイツ人の医師シーボルトは、日本で「お滝」という名の遊女に出会います。シーボルトはお滝を愛し、アジサイの中でも大輪でいちばん美しい品種を「オタクサ」と命名しました。アジサイの原産地は日本・アジアで、高さ1〜2m位まで成長します。2〜6月にピンクや青、紫色の花が咲き、見る人の気持ちを明るくしてくれます。アジサイが「七変化」とも呼ばれるのは、花色の変化に由来します。去年はピンクのアジサイが咲いていたのに、今年は青色のアジサイが咲くなど…。アジサイはアルカリ性の土だと「ピンク」、酸性の土だと「青」というように土によって花色が変化するのです。アジサイの花は花びらのように見える萼(がく)が"花"の形をつくります。花の盛りに採取した萼は熱を下げるのに効果があります。これから梅雨の時期に突入し、憂鬱になる日々が続きます。花色の変化のように私達の気分も変えてくれるアジサイから元気を分けてもらいましょう。

ノイチゴ(平成16年5月号)

ノイチゴはワイルドストロベリーとも呼ばれ、その名は広く知られています。ヨーロッパ・北アメリカ原産で、バラ科の多年草です 夏に白色の花を咲かせ、秋には赤や白色の小さな実をつけます。繁殖力が強く育てやすいこともあり、鉢植えやガーデニングに最適です。夏から秋にかけて親株からツル状の茎が伸び、すぐに根をはることから、“幸せを呼び、家庭円満の象徴”とされ、人気のハーブとなりました。普通のイチゴより小さくて可愛いノイチゴの果実は味も香りもとても豊かで、お菓子やジャムに利用できます。また、ビタミンや鉄分などが豊富なため、貧血、糖尿病、腎臓や肝臓の疾患に効果があります。つぶした果実を外用すると、皮膚の炎症、火傷に効き、さらに葉、茎には利尿効果、根には胃腸の働きを整える作用があります。小さく可愛らしい姿からは想像もできないほど働き者のノイチゴ。これからも私たちに幸せと健康を運んでくれることでしょう。

クチナシ(平成16年5月号)

薬用部:果実  用途:打撲・腰の痛み  原産地:日本・中国 
「クチナシ」の果実は、まるで今にも開きそうなつぼみのようです。しかし、秋を過ぎ、冬が来てもそれが開くことはありません。今にも口を開きそうな期待感を懐(いだ)かせつつも、固く噤(つぐ)んだままなことから「口無し」の名前がついたと云われます。原産地は日本、台湾、中国、インドシナの暖帯、亜熱帯。高さ1.5〜2m位まで成長し,5〜6月に白色の花が咲き、とても甘い香りを漂わせます。生薬名を山梔子(さんしし)といい、熱を吸収して症状をやわらげる消炎作用があるので、はれものや打撲に効果があります。女の子のいる家では庭にクチナシを植えてはいけないとの迷信があります。これは、「嫁の口がない」というこじつけでしかないのですが、年頃の女の子のいるお宅に贈るのは控えた方が良さそうですね。当薬草園には、八重咲きのクチナシがあります。花言葉の通り、その美しさと良い香りは『とても幸せ』な気持ちにしてくれます。ぜひ薬木薬草園に足を運んでみて下さい!

菖蒲(平成16年4月号)

菖蒲は東南アジアから日本全土に広く分布しており、小川や水辺に自生する常緑の多年草です。葉は剣型で芳香があり、5〜6月頃に白色の花を咲かせます。葉の香りが強いことから魔除けの効果があるとされ、ヨモギとともに家の軒にさせば邪気を払う、葉の形が剣型なことから病気を退けるなどと信じられてきました。現在でも菖蒲で地面をたたき、悪い気を追い出す「菖蒲打ち」という行事が残っているそうです。根茎の部分は生薬として用いられ、去痰や腹痛、下痢などに効果があります。また、入浴剤として利用すると、リウマチや神経痛に作用します。菖蒲は端午の節句の時期に花が咲くことから『世の中で負けないようにたくましく育て』という祈りを込めて家々で飾られてきました。

ジンチョウゲ(平成16年4月号)

用途:のどの痛み  原産地:中国 
日本名の「沈丁花」は、花の香りが沈香(じんこう)や丁香(ちょうこう)のように香り高いことから、二つの名前をあわせて作られたと言われています。また、香りは沈香、花は丁子に似ているからという説もあります。原産地は中国で、中国から日本に渡来したのは室町時代。根を薬用とするため輸入したのですが、あまりにも香りが良いので、庭の花木の鑑賞用として広く楽しまれるようになりました。高さ1〜2m位まで成長し、3〜4月に白や淡紅色の愛らしい花が咲き、芳しい香りを漂わせます。夕方や湿気の多いところでよく匂い、その香りが千里のかなたまで届きそうなことから、千里花とも呼ばれています。「栄光」という花言葉もこんなところから付けられたのでしょう。3〜4月の花を日干しにしたものが、生薬の端香花(ずいこうか)。のどの痛みに効果があります。それはきっとジンチョウゲの優しい香りが痛みを癒してくれるから…皆様もぜひ、ジンチョウゲの良い香りを薬木薬草園にてお楽しみ下さい!!

ソメイヨシノ(平成16年3月号)

桜の種類は非常に多く、園芸種まで入れると300種以上。その中でも最も多く栽培されているのがソメイヨシノで、高さ7mにまで成長する落葉高木です。4月下旬、葉の出る前に木を覆うように淡い紅白色の花が咲き、花が満開になる様子は華やかで美しく、殆どの桜の名所に植えられています。「ソメイヨシノ」と言う名は明治初期に東京・染井村の植木屋が売り出したことから命名されました。薬用となるのは樹皮で、生薬名は「桜皮(オウヒ)」、咳を鎮めたり、痰を取り去る効果があります。また、解毒の効果もあり、古くは食中毒に用いました。主にソメイヨシノ、ヤマザクラが利用され、6〜8月に樹皮を剥がして日干ししたものを煎じて用います。更に、薬効はないのですが花は塩漬けにして桜湯に、葉も塩漬けにすると桜餅に使うことが出来ます。華やぐ桜の木の下で、桜湯を飲みながら春を感じてみてはいかがでしょう?

モクレン(平成16年3月号)

用途:蓄膿症・鼻炎  原産地:中国 
昔「モクレン」は、ランのような性状の花が咲くことから「木蘭(もくらん)」と呼ばれていました。しかし花の形はハスに似ていたので、「木蓮」と呼び名も変わりました。原産地は中国で、高さ5〜10m位まで成長し、3月〜5月に花が咲きます。モクレン類は1億年も前から今の姿をしていたことが化石から判明しており、最古の花木で、ほかの花木類の先祖と見られています。そんなに広いスペースがなくても木が植えられるので、狭い庭でも楽しむことができます。普通モクレンというと「シ(紫)モクレン」を指しますが、「ハク(白)モクレン」もあります。花の色はほかにも黄や紅があり、葉の出る前、枝先にとても大きな花を上向きにつけます。花は大きくも周りに溶け込むような柔らかな美しさで気品あふれる花です。「自然への愛」という花言葉がよく合います。花のつぼみを日干しにしたものが、生薬の辛夷(シンイ)。蓄膿症や鼻炎に効果があります。四季折々に色合いを変える薬木薬草園にて植物たちをお楽しみ下さい。

アミガサユリ(平成16年2月号)

アミガサユリは中国原産のユリ科の多年草植物で、江戸時代中期頃、日本へ渡来しました。鑑賞用として用いられる他、薬用としても栽培されています。3〜4月頃に薄い黄緑色の鐘型の花が下向きに咲き、30〜80cmの高さになります。花の内側に紫色の網状の模様が見られる為、アミガサユリ(網笠百合)の名前が付けられました。鱗茎 (りんけい/地下茎の一部)の部分は「貝母(ばいも)」と呼ばれ、2片が向き合い、1片がもう片方を抱くように重なり合っています。その形がハマグリに似ている事から、この名前があります。この貝母の部分が薬用として用いられます。貝母に砂糖を加え煎じて服用すると咳止めとなり、その他、去痰や止血、利尿などの効果もあります。また、早春、花がない時期に開花するこの花は、花の色が渋い事もあって、茶花(茶室の床に生ける花)としても用いられます。

ストレリチア(平成16年2月号)

用途:頭痛・肩こり  原産地:南アフリカ 
「ストレリチア」という名前は、イギリスのキングジョージ三世の皇后であるシャ−ロット・リフィア女王の出家、メクレンブルグ・ストレリッチア家の名にちなんでつけられました。原産地は南アフリカで、日本には明治時代に渡来しています。別名、極楽鳥花(ゴクラクチョウカ)。文字通り極楽に住む鳥をイメージさせる花です。花の色は全体がオレンジでところどころに黄色や青、紫などが入っています。高さ1mくらいまで成長し、10〜2月に花を咲かせます。暑い国の花らしく極彩色でトロピカル、南国のムードがいっぱいです。以前は高価な花でしたが、安く手に入るようになり、すっかり日本に定着したと言えるでしょう。派手な色合いでありながら、真っすぐで気高く、上品な花だからこそ日本の伝統美である生け花にもよく使われるのかもしれません。「恋の伊達者」という花言葉からは、派手な飾りの帽子をかぶり、気取っているプレイボーイを連想してしまいます。当薬草園内の温室「燦々の部屋」にも見ることが出来ます。是非、お立ち寄り下さい!

正月飾り(平成16年1月号)

田代地方で配置売薬業を営む人々には、昔より伝えられている年始の行事があります。それは、日常利用する行商道具を供え、その年の商売繁盛と健康を願うものです。田代売薬が盛んだった頃、売薬さんはダイダイを飾った餅と米、塩、お神酒などを床の間にお供えし、それらと共に柳行李などを飾りました。また、床の間には神農が描かれた掛け軸をかけ、その年の商売繁盛を祈願しました。神農とは、古代中国の皇帝とされる人物で、薬と農業の神様でもあります。神農は草を食べ、その草が薬草かどうかを自分の身体で試し、それを人々に伝えていったと言われており、日本でも薬業関係者に信仰されています。柳行李などの商売道具には神が宿っており、その神様が商売を繁盛させてくれると信じていた売薬さんの想いは、柳行李からアタッシュケースに変わった現代でも受け継がれ、正月飾りは今も行われています。また、当館でもロビーにて売薬さんの正月飾りを行い、お客様に紹介しております。古くより伝わる信仰心や伝統行事を私たちは改めて見なおし、後世まで伝えていくべきではないでしょうか。

ボケ(平成16年1月号)

薬用部:果実  用途:疲労回復・冷え性  原産地:中国 
今では「ボケ」というこの名前は、「モケ」と呼ばれていたのが変化したものです。果実がウリに似ているので、木瓜と漢字で表したのを昔は「モケ」と読んでいたのです。原産地は中国で、日本には平安時代に渡来したといわれます。高さ1〜2mくらいまで成長し、2〜4月ごろに赤や白、ピンクの花を咲かせます。花の色が赤いものを「ヒボケ」、白いものを「シロボケ」といいます。花が終わると10月頃に果実がなります。この実を果実酒にしたボケ酒は香り高く絶品です。飲むと、疲労回復や筋肉のケイレンに効くといわれます。また、実をお風呂に入れると冷え性や不眠症に効果的です。ボケはあまり大きくなる木ではありません。狭い庭にむいているところから「平凡」という花言葉がつきました。新築祝いなどには、ちょっと皮肉っぽいかもしれませんね。
★ボケ酒の作り方★
果実1kgを数片に輪切りし、グラニュー糖400gとホワイトリカー1.8Lに漬け、半年ほどおく。

禹余糧(平成15年12月号)

「生薬」とは、植物や動物、鉱物など、自然の中にある薬の原料の事です。当博物館の2階展示室には約100種類の生薬を展示しており、その中の一つに「禹余糧」があります。禹余糧は中国産の鉱物性生薬で、褐鉄鋼の一種の殻の中に粘土を含んだものです。この粘土に水酸化第二鉄のある状態のものが混ざり、禹余糧は褐色や黄色となります。また、禹余糧は方言で「鳴石」「鈴石」とも呼ばれています。殻の中の粘土の塊や、これに混ざった小石、砂などが乾燥し、振ると鈴の様な音を発する事から、この名前で呼ばれるようになりました。時に水が混ざっていることがあり、その場合は、通称「水入鳴石」と呼ばれます。禹余糧の日本での初めての記載は、東大寺正倉院に納められている「種々薬帳」(756年)にあり、遣唐使によって日本に入ってきました。中国で主に採集され、収斂、止血として、慢性下痢、血便などに用います。

ツバキ(平成15年12月号)

薬用部:葉・花・種子 用途:滋養・強壮 原産地:日本・中国
 「ツバキ」の名前は、葉に艶があるから「艶葉木(つやはき)」と名付けられたとの説と、葉が厚いので「厚葉(あつき)」と呼ばれた名が変化したとの説があります。原産地は日本、中国で、高さ5〜8m位まで成長します。12〜4月ごろに赤や白、ピンクの花を咲かせます。花言葉は、赤がひかえめな美徳、白は最高の愛らしさです。真紅の花の花言葉が"ひかえめ"と表現されるのは、とても艶やかな赤色でありながら、花には香りがないからです。乾燥した花を刻み、健康茶として飲むと、滋養・強壮に効果があります。ツバキは散る時に、ポトリと首を落とすように花が落ちます。その様子は、縁起が悪く見えるので、お見舞いや新築祝いなどには向かない花と言えるでしょう。ツバキは英名で「カメリア」と言います。有名ブランドシャネルでよく見る花の形をしたブローチの名前もカメリアです。デザイナーはツバキの花が好きなのかもしれませんね。

ウメ(平成15年11月号)

梅は古い時代に中国より伝わり、春を告げる花として人々から愛されています。観賞用に300種以上の品種があり、花も純白から赤く色づくものまでさまざまです。名前は「烏梅」の中国読み「ウメイ」からきています。12月頃から咲き始める梅の花は3月頃まで楽しむことができます。実りは6月。この時期の長雨を"梅雨"と呼ぶのは、梅の実がこの時期に熟すためです。梅は薬用として利用でき、実のさっぱりとした酸味は咳を静め、熱を下げるだけでなく、疲労回復や健康維持に効果があります。梅酒は健康酒ですし、梅干も黒焼きにして風邪に用いたりと生活の中で生かされています。また、そんな梅を愛した人も居ます。「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて 春な忘れそ」。菅原道真が都から遠く太宰府に旅立つときに愛しんだ梅のために詠んだ歌です。道真を慕い、遥か大宰府の地に花を咲かせた梅の花は、今も「飛び梅」と呼ばれ、純白の花を咲かせています。遥か昔から愛されている梅は、これからも私たちに春を知らせる甘い香りと、やさしい花を見せてくれることでしょう…。

スイセン(平成15年11月号)

薬用部:鱗茎 用途:肩こり・はれもの 原産地:スペイン・ポルトガル
「スイセン」という和名は、中国で「水仙」と当てられた漢字が日本読みにされたものです。中国では水の近くに多く生息したこの植物を「水の仙人」のように思ったことから「水仙」の名を与えました。原産地はスペイン・ポルトガルで、高さ20〜40cm位まで成長します。10〜4月ごろ、白色や黄色の花を咲かせます。生の鱗茎は肩こりや腫れものに効き、外用としては利用できますが、有毒なので内服はできません。スイセンの花言葉は「うぬぼれ」「自己愛」です。この花言葉は、ギリシャ神話より生まれたものです。青年ナルキッソスは、その美貌から、乙女たちの心をとりこにしました。でも、自分からは決して人を愛そうとしません。その冷たい態度は、森のニンフ、エコーが仕事ができなくなるほど彼を愛した時も変わりませんでした。復讐の女神ネメシスは怒り、「人を愛せない者は自分自身を愛すればいい」と呪いをかけました。ナルキソッスは水面に映った自分の姿に恋をし、その恋の苦しみで食事も喉を通らなくなり、やせ細って1本のスイセンになったといわれます。花言葉から受ける印象とは異なり、その姿は清楚で花束にすると可愛らしい花です。

種痘用具(平成15年10月号)

「種痘用具」とは、牛痘法(1796年 イギリスの医師エドワード・ジェンナーが牛痘法を用いて種痘実験に成功)に使われた用具です。人類は大昔から天然痘に苦しめられてきました。日本でも江戸時代の死因の第一位を占め、幕末には国民の1/3に痘痕があったといわれています。その天然痘に寛政2(1790)年、初めて人痘法(鼻乾苗法)を施したのが、筑前秋月藩の緒方春朔(1748〜1810)です。人痘法とは、乾燥した痘瘡のカサブタを粉末にすり潰したものを、銀管、または竹筒で鼻腔へ吹き入れ、天然痘ウィルスを人へ接種する方法でした。この方法に、植えつけられた生命の危機、周辺へのウィルス散布による感染の危険性があったことは否めません。しかしこれは、予防医学の誕生であり、緒方春朔の功績が、現代の予防医学(免疫法)、つまり予防ワクチンの発見へと繋がることとなったのです。「上医は未だ病まざるのに治す」との彼の言葉が、この種痘用具から聞こえてくるようです。

ツワブキ(平成15年10月号)

薬用部:葉・根茎 用途:健胃・魚の中毒
「ツワブキ」は、葉の表面につやがありフキの葉に似ていることから、"艶ブキ"と名付けられました。その名の通り、フキによく似ています。また、厚葉ぶきの「あ」が省略されて、この名があるともいわれています。本州・四国・九州に分布しており、高さ50〜60cm位まで成長します。10〜11月ごろ、黄色の花を咲かせ、ハート形の葉が特徴です。葉は打撲や切り傷に、根茎は食あたりや下痢止めに用いることが出来ます。庭の片隅に植えておけば、なにかと重宝するでしょう。10月頃までに根茎を掘り上げ、泥をきれいに洗い落として、刻んで乾燥させたものを「タクゴ」と言います。これは生薬名で、九州ではツワブキの葉(タクゴ葉)の粉末と、「ガジュツ」の粉末をブレンドした胃腸薬があります。ツワブキの葉の持つ抗菌作用と胃の働きを調えるガジュツの相乗効果を期待したものと言えるでしょう。花の少なくなる殺風景なこの時期に、華やいだ彩りのツワブキ。季節移りゆく秋の庭が寂しいと感じるあなた、ツワブキを植えてみてはいかがでしょうか。

鍾馗(平成15年9月号)

鍾馗とは、疫病や魔をはらう神様です。もともと、鬼を追い払う小槌のことを「終葵(しゅうき)」と呼んで魔除けとしていました。これを擬人化し、神格化したものが鍾馗と云われています。鍾馗についてのこんな話があります。中国、唐の時代、玄宗という皇帝が鬼たちに悩まされていると、そこに鍾馗が現れ、鬼たちを退治してくれたのです。夢から覚めると皇帝の病気は回復していました。その後、皇帝は鍾馗の姿を画に描かせ、魔をはらう神様として広く民衆に伝えられました。
 また、鍾馗は日本でも古くから知られており、江戸時代から端午の節句に取り入れられています。こいのぼりと共に掲げられるのぼりには、大きな目と立派なひげを持った鍾馗の勇ましい姿が描かれています。古い京都の町並みにもまた、家の屋根に小さな鍾馗の像を見つけることができます。生活の中に登場する鍾馗は、親しまれながら語り継がれ、身近なところで私たちを守り続けてくれているのです。

パセリ(平成15年9月号)

薬用部:葉・根・種子 用途:利尿作用・貧血 原産地:地中海沿岸地方
「パセリ」の名前は、英名のparsley(パースレー)が変化して名付けられました。原産地は地中海沿岸地方で、高さ30〜60cm位まで成長します。9〜10月ごろ、小さな緑黄色の花をたくさん咲かせます。古代ギリシャ・ローマ時代から薬用として利用され、日本には江戸時代に渡来したといわれています。日本では、パセリがハーブだということがあまり知られていません。パセリには、オレンジの4倍ものビタミンCが含まれており、ビタミンaや鉄やカルシウムなどのミネラルも豊富です。パセリの青汁を飲むと貧血に効果があり、生の葉をもんで患部にすり込むように塗ると、虫刺されによいです。新鮮な葉は、肉や野菜料理の飾りに使ったり、ニンニク料理のつけ合わせに多く使われます。息を甘くする効果があったり、ニンニクのにおいを隠すという珍しい特徴があるからです。女性はどうしても鉄分が不足しがちです。不足している鉄分をパセリで補いましょう!

神壷(平成15年8月号)

日本における医薬の祖とされる神様は、大国主命(おおくにぬしのみこと)と、少彦名命(すくなひこなのみこと)です。 この二人の神様は、国造りを進めながら、医薬やまじない、酒造りなどを開発し、人々の為に尽くしたといわれています。二人はそれぞれ各地の神社で祀られており、東京の日本橋には、両神を祀った「薬祖神社」があります。日本橋本町といえば江戸時代より薬種で栄えた『くすりの町』。この神社では、毎年10月17日に「薬祖神祭」が行われ、多くの人々で賑わいます。お祭りでは「神壷」という縁起飾りが配られます。別名「おけら笹」とも呼ばれ、昔の薬壷(やっこ)をかたどったものが笹に結ばれています。そして、壷の中には、薬草であるおけらと紅白の餅が入っており、立春の日にそのおけらを火にくべ、さらにその火の中で餅をあぶって食べると、その年を健康に過せると云われています。

ウコン(平成15年8月号)

薬用部:根茎 用途:血行促進・食欲増進 原産地:東南アジア
「ターメリック」の和名は「ウコン」です。みなさんには「ウコン」の方がなじみがあるでしょう。原産地は東南アジアで、日本では、沖縄で多く栽培されています。高さは1m〜1.5mまで成長し、9月〜10月に白から淡い黄色、わずかに桃紫色がまじったランのような大きな花が咲きます。甘く強い香りがします。1つ1つの花の命は短く、日中咲いて、日暮れにはしぼんでしまいますが、次々に蕾が現れて10日ほど咲き続けます。ウコンの根茎は、ゆでたり蒸したりしてから乾燥させます。血行促進や食欲増進に効果があります。日本では、ほとんど粉末で売られており、みなさんがよく知る食品にも使われています。カレー粉の黄色、あれはウコンの色です。インド料理やエスニック料理の明るい黄色とスパイシーな風味に欠かせない植物です。また、染料としても使われ、オレンジ色や黄色に染めあげます。これからが夏本番ですね。夏バテで食欲のない方は、ウコンを飲んで暑い夏を乗り切りましょう!!

売薬版画(平成15年7月号)

「配置売薬」の事を考える時、その独特の販売方法はもちろん、売薬さんのお土産や、薬袋などの印刷物にも想いは巡ります。売薬さんが持ってくるくすりは、"身体を癒すもの"であるだけでなく、"目にも楽しい"ものだったからです。その中でも、全国にお得意さんを抱えていた富山売薬は、くすりの文化と共に印刷物の文化も大変栄えていました。その印刷物の中でもひときわ目を引くのが、江戸後期から作られた「売薬版画」です。当時「にしきえ錦絵」とも呼ばれたその多色刷り版画は、色美しく華やかで、日本の名所や人気役者を描いた浮世絵の様なものでした。それらの作品は、版画を扱う版元や彫師など、富山の職人によって生み出された「富山の版画」でした。これがお得意さんの家にお土産として配られていたのです。今も続く「おまけ商法」は、ここから生まれたと云われています。くすりは科学的な力を持って病気を癒してくれます。しかし、売薬版画に描かれるものもまた、不思議な力を持って病気を癒す力となってくれます。売薬版画は単なる「おまけ」ではなく、それ自身もまた、「くすり」だったのかもしれません。

キキョウ(平成15年7月号)

薬用部:根 用途:風邪・去痰 
春の七草は寒い季節の食べものであるのに対し、秋の七草は観賞ものが多いです。哀愁を感じさせてまことに美しい「桔梗(キキョウ)」は秋の七草のひとつで、日本・中国・朝鮮半島に分布しています。高さは50cm〜1m位まで成長し、葉や茎に傷をつけると切り口から白い乳液が出てきます。7月〜9月までと開花期が長く、青紫色、ときに白色の花を咲かせ私たちの目を楽しませてくれます。日本では古くから桔梗の花の華麗さを歌に詠んだり、文学や美術に取り上げてきました。観賞よりも薬用として重要視されている中国からは、漢方としての利用法が伝わってきました。朝鮮では根を漬け物や山菜として食します。日本でも、春の若芽をおひたしや和えものにして食べています。冬に採った桔梗の根は、痰をとり去る効果があります。根の皮をはいで、刻み、日に乾かしたものを煎じて飲みます。これから、見頃をむかえる桔梗の花を薬木薬草園でのんびりとご覧下さい。

六物新志(平成15年6月号)

「六物」とは、一角(ウニコウル)、夫藍(サフラン)、肉豆蒄(ニクズク)、木乃伊(ミイラ)、噎浦里哥(エブリコ)、人魚の6種の薬物のことです。そして、これらについて天明6(1786)年、大槻玄沢(おおつきげんたく)が蘭書に基づいて考証したのが「六物新志」です。玄沢は、杉田玄白や前野良沢に師事した蘭学者でした。江戸時代、日本に渡来した頃の蘭方医学はあやふやな知識でしたが、玄沢の解説によって、「六物」はより正確なものとなります。それまで陸上に棲む犀(サイ)の角と考えられていた一角は、一角魚の歯牙であると判明しました。また、ミイラについても没薬(゛ミルラ゛という植物)とされていたのを、人の死屍(シカバネ)と明らかにしました。ただし、人魚像に関しては、美しい女性の上半身に、下半身は魚体という姿を玄沢は信じていたようです。
次々と明らかにされてきた六物。しかし霊薬とされる六物の神秘は、すべてを知れぬまま謎にしておきたい気もします。