売薬版画(平成15年7月号)

「配置売薬」の事を考える時、その独特の販売方法はもちろん、売薬さんのお土産や、薬袋などの印刷物にも想いは巡ります。売薬さんが持ってくるくすりは、"身体を癒すもの"であるだけでなく、"目にも楽しい"ものだったからです。その中でも、全国にお得意さんを抱えていた富山売薬は、くすりの文化と共に印刷物の文化も大変栄えていました。その印刷物の中でもひときわ目を引くのが、江戸後期から作られた「売薬版画」です。当時「にしきえ錦絵」とも呼ばれたその多色刷り版画は、色美しく華やかで、日本の名所や人気役者を描いた浮世絵の様なものでした。それらの作品は、版画を扱う版元や彫師など、富山の職人によって生み出された「富山の版画」でした。これがお得意さんの家にお土産として配られていたのです。今も続く「おまけ商法」は、ここから生まれたと云われています。くすりは科学的な力を持って病気を癒してくれます。しかし、売薬版画に描かれるものもまた、不思議な力を持って病気を癒す力となってくれます。売薬版画は単なる「おまけ」ではなく、それ自身もまた、「くすり」だったのかもしれません。

キキョウ(平成15年7月号)

薬用部:根 用途:風邪・去痰 
春の七草は寒い季節の食べものであるのに対し、秋の七草は観賞ものが多いです。哀愁を感じさせてまことに美しい「桔梗(キキョウ)」は秋の七草のひとつで、日本・中国・朝鮮半島に分布しています。高さは50cm〜1m位まで成長し、葉や茎に傷をつけると切り口から白い乳液が出てきます。7月〜9月までと開花期が長く、青紫色、ときに白色の花を咲かせ私たちの目を楽しませてくれます。日本では古くから桔梗の花の華麗さを歌に詠んだり、文学や美術に取り上げてきました。観賞よりも薬用として重要視されている中国からは、漢方としての利用法が伝わってきました。朝鮮では根を漬け物や山菜として食します。日本でも、春の若芽をおひたしや和えものにして食べています。冬に採った桔梗の根は、痰をとり去る効果があります。根の皮をはいで、刻み、日に乾かしたものを煎じて飲みます。これから、見頃をむかえる桔梗の花を薬木薬草園でのんびりとご覧下さい。

六物新志(平成15年6月号)

「六物」とは、一角(ウニコウル)、夫藍(サフラン)、肉豆蒄(ニクズク)、木乃伊(ミイラ)、噎浦里哥(エブリコ)、人魚の6種の薬物のことです。そして、これらについて天明6(1786)年、大槻玄沢(おおつきげんたく)が蘭書に基づいて考証したのが「六物新志」です。玄沢は、杉田玄白や前野良沢に師事した蘭学者でした。江戸時代、日本に渡来した頃の蘭方医学はあやふやな知識でしたが、玄沢の解説によって、「六物」はより正確なものとなります。それまで陸上に棲む犀(サイ)の角と考えられていた一角は、一角魚の歯牙であると判明しました。また、ミイラについても没薬(゛ミルラ゛という植物)とされていたのを、人の死屍(シカバネ)と明らかにしました。ただし、人魚像に関しては、美しい女性の上半身に、下半身は魚体という姿を玄沢は信じていたようです。
次々と明らかにされてきた六物。しかし霊薬とされる六物の神秘は、すべてを知れぬまま謎にしておきたい気もします。

ニゲラ(平成15年6月号)

薬用部:花・種子 用途:消化 原産地:ヨーロッパ・地中海沿岸
「ニゲラ」という名前は、ラテン語のniger(黒い)から名付けられました。原産地はヨーロッパ・地中海沿岸で、高さ30〜50cm位まで成長します。6〜7月に青色や白色、桃色の花を咲かせますが、花びらに見えるのは実は萼片(がくへん)です。開花後、風船のようにふくらんだ果実はドライフラワーとして利用できます。その中にゴマのような黒い種ができるので、日本では「クロタネソウ」と呼ばれます。黒く熟した種をつぶすとフルーツの香りがします。インドでは香辛料とされ、ドイツでは魔よけの効果があるとしてパン生地に混ぜて食べていたそうです。しかし、種は有毒なので、専門員の処方なしに噛んだり食べたりしないように!使用量を間違わなければ消化を助ける効果があります。まるで夢の中に咲いたような姿から、英名で「ラブインアミスト(霧の中の恋人)」とよばれているニゲラ。幻想的なその名の通り、ミステリアスな雰囲気漂う魅力的な花です。

ワートル薬性論(平成15年5月号)

原典は、オランダ人のハンデ・ワートルによって書かれた薬物書です。それを林洞海(はやしどうかい)が翻訳し、安政3(1856)年に刊行したのがこの「ワートル薬性論」です。洞海 は、長崎でオランダ医学を学び、江戸の医師、佐藤泰然に師事します。そこでこの薬物書を見つけたのです。従来の薬物書が辞書的に記述されてあったのに対し、この書では、薬物を薬効にて分類しています。第1巻で緩和剤、第2巻で収れん性止血防腐剤、第3巻では強壮解熱剤と続き、附録では、鉱泉についても述べた、21巻18冊の書物です。洞海が翻訳してから、医学館による刊行の許可を得るまでに16年もを要するという曲折を経た後の発刊でした。しかし、発刊後の日本における西洋薬物学の進歩に貢献した洞海の功績は大きく、長い年月をかけても発刊すべき価値ある書物であったと言えるでしょう。

スイートバイオレット(平成15年5月号)

薬用部:花・葉 用途:利尿作用・去痰 原産地:ヨーロッパ
「スイートバイオレット」の和名を「ニオイスミレ」といいます。「ニオイスミレ」という名前の由来は、花の香りが強いことから名付けられました。とても甘く優しい香りがします。原産地はヨーロッパで、草丈20cm位まで成長します。葉はハート形をしており、花はスミレ色や白色、桃色の可憐な花を咲かせるとてもかわいらしい植物です。3〜4月に花が咲き、一重咲きのほか八重咲きもあります。近い種類に、花びらが黄・白・紫の3色からなるハートシーズがあります。薬用となるのは花と葉で、利尿作用や痰を取り去る効果があります。花と葉は香水の原料としても使われています。また、花の砂糖漬けはお菓子などの飾りにもなります。腐葉土のふとんをかぶって過ごした長い冬から解放されたスイートバイオレットによって野や森は華やぎ、喜びにあふれます。野道や樹々の中を散歩しながらこの喜びを肌で感じてみてはいかがでしょうか。

霊芝(平成15年4月号)

霊芝は、サルノコシカケ科マンネンタケ、またはその近縁種の子実体を乾燥した植物です。中国や日本に産し、『日本書記』にも登場するなど、古くから瑞草として珍重されてきました。「赤芝」「黒芝」「青芝」「白芝」「黄芝」「紫芝」の6種があり、紫芝以外は、それぞれ心・腎・肝・肺・脾の五臓に効果があると云われています。マンネンタケなどは、産出時期、あるいは寄主により傘の色が変化するのです。尚、現在用いられるのは紫芝と赤芝がほとんどで、強壮、鎮静に効果があります。また、民間薬として、不眠症や消化不良などにも用いられます。江戸末期に書かれた『福草考(さきくさこう)』にも霊芝にまつわるエピソードが記されています。顕宗天皇(485〜487)の時代に、宮庭に茎が三枝に分かれたマンネンタケが生え、これを天皇へ献上すると大変喜ばれ、献上者にさえぐさべのむらじ三枝部連という姓を与えました。これが今日のさえぐさ三枝という姓の由来と云われています。

ソメイヨシノ(平成15年4月号)

薬用部:樹皮 用途:鎮咳・去痰 原産地:日本
「ソメイヨシノ」という名前は、明治初期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木屋が売り出した事から名付けられ、1900年に藤野寄命により命名されました。原産地は日本で、高さ7m位まで成長します。ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガン(ヒガンザクラ)の雑種です。花は淡い紅色や白色で、4月上旬、葉の出る前に木を覆うように咲き、花が満開になる様子は華やかで美しく、その右に出るものはないほどです。サクラの名所のほとんどにはソメイヨシノが植えられており、名実ともにサクラの代名詞となっています。開花期を決めるサクラ前線はソメイヨシノが基準となっています。しかし、佳人薄命(美人は病弱で早死にしたり、運命にもてあそばれて不幸になったりすることが多い)と言われるように、春を美しく彩るソメイヨシノは害虫がつきやすく、命が短いのが欠点です。薬用となるのは6〜8月の樹皮で、はがして日干しにしたものを用います。咳を鎮めたり、痰を取り去る効果があります。薬効は無いのですが、花は塩漬けにして桜湯に、葉も塩漬けにして桜餅に使われます。華やぐサクラの樹の下で、桜湯を飲みながら春を感じてみてはいかがでしょうか?

丁子(平成15年3月号)

丁子はインドネシアのモルッカ諸島が原産で、「クローブ」という名前のスパイスとしても知られています。「丁子」という名前は、つぼみの形がアルファベットの"t"の字に似ていることから名付けられました。また、つぼみが爪の形にも似ていることから、"爪"の意味を持つ「clove」が英名としてつけられました。丁子は熱帯地方に見られ約10mにまで成長する常緑小高木です。樹木が成長するまでに20年費やしますが、その後は50年にわたり花を咲かせつづけます。丁子のつぼみは紅い花を咲かせますが、生薬として用いられるため、花を開くことなく、つぼみのうちに採取されてしまいます。丁子の用途は幅広く、スパイスとされる他、消化促進や風邪薬などの薬として用いたり、歯科では丁子油を虫歯の治療に利用します。また、香料としても用いられ、「丁子」または「丁子香」とも呼ばれます。丁子を料理に用いるなどして疲れた体を元気付けてみてはいかがでしょうか?

アスパラガス(平成15年3月号)

薬用部:茎・根 用途:利尿・緩下作用 原産地:ヨーロッパ
「アスパラガス」は春の野菜です。原産国はヨーロッパで、日本には1781年に渡来してきました。細い葉をたくさんつけ、直立した茎が高さ1〜3mくらいに成長します。夏になると緑がかった小さな花が咲き、やがて丸く赤い実をつけます。おもに北海道や長野県で栽培されていますが、生産量は鳥栖市(佐賀県)が日本一です。鳥栖市やとなり町の基山町でアスパラガス作りが始まったのは1970年(昭和45年)からで、近年では、「アスパラワイン」という商品まで生まれました。春になると、多肉質の太い若芽がでます。この太い若芽が、野菜として私達が普段食べている部分です。茹でたり、バターで炒めて食べるとおいしいです。採りたてのものは、みずみずしく甘い味がします。茎の生汁には利尿、緩下作用があります。トマトと混植すると、ネマトーダ(線虫)などの害から守ります。他にも、バジル・トマトとの3種の混種はお互いを元気にします。この春はアスパラガスを食べて、元気を分けてもらいましょう!

白檀(平成15年2月号)

「白檀」とは、ジャワ島からチモール島にかけて分布するビャクダン科の常緑小高木です。中でもインド南西海岸に近いマイソール地方は、白檀地帯と言われるほど有名な産地で、良質高価な白檀を産出しています。初めは独立して生育しますが、後に吸盤で寄主の根に寄生する半寄生植物です。幼樹の頃はイネ科やアオイ科、成長するにつれて寄生性も高まり、タケ類、ヤシ類などへと移り、寄生の植物は140種以上数えられます。多種によって生長するのですから、自然が豊かでないと育たない植物だといえるでしょう。それでも絶滅の危機にないのは、政府の保護下に置かれるほど有用性の高い植物だからです。5月頃、黄色や紫色などの小さな花を開き、心材や根には利尿や強壮、解毒・殺菌などの焼薬用効果があります。さらに、仏教やヒンズー教の寺院の建造物、仏像、香木など、多用に利用されています。尚、インドでは紀元前から高貴なものとして珍重され、今も葬儀には欠かせない香木であり、かなりの量が消費されています。

アロエベラ(平成15年2月号)

薬用部:葉 用途:切り傷・やけど・便秘 原産地:南アフリカ
「アロエ・ベラ」は南アフリカ原産の薬用アロエの一種です。主に西インド諸島で栽培され、高さ1mくらいに成長します。水分を多く含む肉厚の葉はタンポポのように地面に放射状に広がり、縁にはトゲを持っています。葉は大きくなると灰色がかり、1〜2月には黄色かオレンジ色の花を咲かせます。薬用としての効果は2つ。葉に含まれる透明のゼリーは傷や、やけどに作用し、傷の治りを速め、感染を防ぐ効果を持っています。西洋では1950年代にやけど、特に放射線熱傷に効果があることが発見されました。そして、もう1つ。葉の茎部から取れる黄色い液体が、便秘に効果があります。 アロエ・ベラは皮膚のローションとして長い歴史があり、クレオパトラが美容のために用いていたとも言われています。家庭に常備し、やけどなどの応急処置に使ってみてはいかがでしょうか?

桂皮(平成15年1月)

「桂皮」とは、桂の木の樹皮のことで、一般的に「シナモン」の名で知られています。15〜16世紀の大航海時代に探検家達が探し求めたスパイスのひとつです。原産国はスリランカで、その他インドやフィリピンで生産されており、世界中の熱帯地方で広く栽培されています。8〜18mに育ち、樹皮は柔らかく、赤褐色をしています。淡い黄色の花が咲き、濃い青色の果実がなります。収穫は雨期に行い、スリランカでは、5〜6月、及び10〜11月となります。一番最初に収穫した樹皮は厚くて質が劣り、はがしとる回数を重ねるごとに、良い質のものが採れるようになります。尚、桂皮はユダヤ教の戒律「トラハ(torah)に初めて名を残している薬用植物で、風邪や消化器系の症状に効果があります。また、ほのかな甘味と独特のかおりがあり、日本では八つ橋やニッキ水などに用いられます。 世界中で活用度が高く、古代より親しまれている薬木。そんな自然の恵みでもある桂皮をこれからも私たちで守っていきたいものです。

オレガノ(平成15年1月号)

薬用部:花・葉 用途:頭痛・生理痛の緩和 原産地:ヨーロッパ・西アジア
原産地はヨーロッパ・西アジアで、高さ40〜70cmに成長します。6月〜8月に茎の先の方にピンクの小さな花が集まって咲きます。「オレガノ」はギリシャ神話で、愛と美の女神ビーナスが海の水から作り出したとされます。太陽をたくさん浴びるようにと、一番高い山に植えられた植物と伝えられており、古くから栽培されていたハーブです。名前は、ギリシャ語で「山の喜び」という意味を持ちます。和名をハナハッカ(花薄荷)というように、ミントに似た香りと辛味があります。
ギリシャでは婚礼の時、新郎新婦がオレガノを冠にしてかぶったもので、また、死後の幸福な生活を保障するため、墓地に植えられたそうです。オレガノの葉のハーブティーには、強壮作用や頭痛、生理痛を緩和する効果があります。また、ギリシャ料理・イタリア料理にも使われ、ギリシャでは肉や魚の網焼きの時に使用されます。イタリアでは調味用のハーブのうち最も普及している一種で、葉にピリッとした辛みがあり、ピザ・パスタ・トマト・肉・卵・チーズ料理などに使用されます。一度オレガノを使った料理にチャレンジしてみましょう!

大棗(平成14年12月号)

「大棗」とは、棗の果実が成熟したものです。日本へは中国より伝わり、果樹として広く各地の庭に栽培される他、野生にも見ることができます。高さ10mくらいにまで育ち、4〜5月に薄い黄色の花が咲き、楕円形の甘い果実が成ります。「ナツメ」という名前は、夏に芽が出ることから名付けられたという説と、実の形がお茶の道具の棗に似ているから、という説があります。大棗は古くから薬用として用いられ、中国の古い処方「傷寒論(しょうかんろん)」にもその名が記されているほどです。滋養・強壮、鎮静、緩和、利尿の効果があり、漢方薬の原料としても多く利用されています。さらに、そのまま食べることもできたり、葉は染色の材料にも利用できます。食用として、そして健康のため、さまざまな形で利用されてきた大棗。その力は衰えることなく生き続け、これからも私たちの役に立ってくれることでしょう。

カイエンペッパー

薬用部:果実 用途:強壮・発汗促進・消化促進 原産地:アメリカ大陸の熱帯地域
最も広い地域で生産されている「カイエンペッパー」は、私たちもよく知るスパイスの一つです。和名が「トウガラシ」と聞けば、馴染み深いかと思います。原産地はアメリカ大陸の熱帯地域で、1mほどに成長します。6〜8月に葉のつけ根に白い花を1〜3個咲かせ、その後白い種を含んだ緑や赤い実をたくさん付けます。果実の収穫は、緑の時でも赤い時どちらでもできます。 カイエンペッパーは料理に使われる事が多く、生でも乾燥させても使えます。ビタミンCが豊富な生のカイエンペッパーを買う時は、カリッとしたしわのないものを選ぶのがコツです。粉末のものは、メキシコ料理やカレーなどに利用され、タバスコの原料でもあります。食用とする他、もちろん薬用もあり、炭水化物の消化を助ける働きや、強壮剤としても用いられます。しかし、刺激が強いので大量に用いると大変です!胃や腸の炎症の原因になる事があるので、使いすぎには注意しましょう。また、クリスマスリースにも最適です。今年のリースを赤や緑のカイエンペッパーで彩ってみてはいかがでしょうか。

サフラン(平成14年11月号)

馴染み深いサフランは、非常に高価なスパイスの原料となるものです。それだけでなく、消化促進や婦人病の治療薬、染料としても古くから珍重されていました。特にヨーロッパでは料理には欠かすことのできないスパイスであり、非常に高価であったため、その偽造品を売った者が火炙りの刑に処されたという話も残されています。 原産地は南ヨーロッパ、西アジアで、「サフラン」の名はアラビア語に由来しており、日本では泊夫藍(さふらん)とも書かれます。このサフラン、用いられるのはめしべの柱頭の部分です。球茎を9月中旬に植え付けると、10月中旬〜11月中旬に花を咲かせます。花を早めに摘み取り、さらにその花の中からめしべの先だけを抜き取り、陰干し、乾燥させて用います。サフランのめしべは3本あるように見えますが、実は1本が枝分かれしているにすぎません。ですから1つの花から取れるめしべは1本で、100gのめしべを得るにはおよそ1万7000個の花を必要とするのです。 古代ギリシャにおいてサフランの黄金に輝く色は「ローヤルカラー」として尊重されていました。時を経た現代、サフランの黄金色は色褪せることなく、スパイス、染料、そしてくすりとして広く利用されています。サフランの花が咲きつづける限り、人々はミツバチのようにそのめしべに集うのでしょう。

セージ(平成14年11月)

薬用部:葉・花 用途:食欲増進・消化促進・強壮 原産地:地中海沿岸
「セージ」は和名を「ヤクヨウサルビア」と言い、属名「サルビア」はラテン語のsalvus(安全な、健全な)を語源とします。万能薬と信じられていた古代ローマでは、Herba sacra(神聖な草)という別名もありました。物語の中にも登場するセージは、魔女がよく使っていたと伝えられている植物です。原産地は地中海沿岸で、高さ30〜70cmに成長します。5〜7月にかけて、紫色、青や白色の唇形の花を枝先のほうに穂状につけます。数ある薬草の中でも、セージは優れた利用法が多く、ヒーリングプランツ(癒しの草)と言われるほど、私たちの心や身体を癒してくれます。葉の浸出液はフェイシャルスチームやローションなどに利用でき、油肌を整えます。コモンセージの精油には、脂肪を溶解してくれる美容効果もあります。また料理では、脂肪分の多い鳥・豚・魚料理、レバーなどの臭みの強い料理に葉を使います。ただし、風味が強いので使いすぎには注意しましょう!そして、知ってましたか?ソーセージの名前は、このセージからきているんです。

蘭引(平成14年10月号)

蘭引とは、液体を蒸発させたものを冷却し、純粋な成分を取り出す蒸留器具のことです、液体を入れて加熱させる「加熱部」と、蒸発した液体が通る「渡り部」、そして蒸発した液体を冷やす「冷却部」の3段重ねになっています。「ランビキ」という名前は、ポルトガル語で「蒸留器」という意味をもつ“アランビク”がなまったものです。蒸留器の歴史は古く、紀元前7世紀頃のギリシャで、空気中で簡単に酸化される鉄や亜鉛などの卑金属から、金や銀などの空気中で酸化されにくい貴金属を作り出す際に利用されるなどしていました。後に世界中に広まった蘭引はお酒などを造る道具としても利用され、日本でも焼酎が造られるようになりました。また、蘭引を用いて造られたお酒は「生命の水」として不老長寿の効果があると言われ、昔は薬として売られていました。
古代から伝わってきた蘭引は現代でもなお使用されており、様々なお酒作りに役立っています。

ジャスミン(平成14年10月号)

薬用部:花 用途:鎮静・抗うつ 原産地:インド・ヒマラヤ
「ジャスミン(Jasmine)」という名前は、アラビア語のyasminからきており、それがフランス語のjasman、英語のJasmineに変わった事から名付けられました。和名は「素馨(ソケイ)」と言い、白い香りという意味があります。原産地はインド・ヒマラヤで、高さ1m〜2.3mまで成長します。ジャスミンの仲間は世界に400種ぐらいあり、いずれも熱帯の花木で、黄ソケイ以外は寒さに弱いので、冬は室内か温室で育てます。7月〜9月には枝先に芳香のある白い花を5〜6個咲かせ、花がひとつ開くだけであたりは甘い香りに包まれ、暗くなるとさらに香りは強くなります。花からとれる精油は、優雅で甘美な香りがし、高級な香水原料となります。特に、早朝に摘まれたジャスミンの花からは良質のジャスミン油がとれるとされます。また、精油には抗うつ作用に効果があるほか、オイルマッサージをする際にも使え、気分を明るくしリラックスさせてくれます。鉢花にして、家の中で甘く優しい香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

養生訓(平成14年9月号)

この教訓書の作者、貝原益軒は、寛永7(1630)年に福岡城内に生まれました。19歳の時に黒田藩主・忠之に仕えますが、二年足らずして藩主の怒りに触れ免職となります。その後、七年に及ぶ浪人生活の間、益軒は江戸・京都・大阪・長崎にて多くの学者と交わり、医道をはじめ、朱子学や草本学、自然科学などを学びます。藩主の死後、27歳にて藩に戻ることを許された後も学問を重ね、儒学者として藩に仕えることになりました。そんな益軒が、多くの経験に基づき晩年である84歳(1713年)に著したのが、養生訓です。この書で益軒は「命長くして久しく楽しむにあり」と述べています。これは「健やかに歳を重ねて人生を楽しむ為に元気な時から養生しなさい」という意味です。益軒は当時では驚異的な長寿者で、84歳まで生きています。『病なく生活を楽しむ生き方』を大切とし、彼の人生目標が、そのまま教訓書となったと言えます。著わされてから300年ほど経った養生訓は、欲を制することを苦手とする現代人にとって、悪い生活習慣を見直す書となりそうです。養生するということは、悪い習慣をなくし、当たり前のことを実行し習慣とすることなのかもしれません。

ナスタチューム(平成14年9月号)

薬用部:葉・花・つぼみ 用途:風邪・強壮 原産地:南アメリカ
「ナスタチューム」の和名は金蓮花(キンレンカ)と言い、ナスタチュームの葉が蓮の葉を小さくしたような形をしていることから名付けられました。原産地は南アメリカで、高さ20〜60cmに成長するものから3mにまで成長するものもあります。6〜7月と9〜10月に赤やオレンジ、黄色の花を咲かせ八重咲きなどさまざまな品種があります。緑色の若い種子はピクルス漬けとしたり、おろしてワサビの代わりにする事も出来ます。また、花や葉にはピリッとした辛みがあり、サラダやサンドウィッチに利用できます。葉にはビタミンCやミネラルが多く含まれるため風邪などの症状をやわらげてくれます。花はアブラムシの天敵の虫、ハエやアブを呼び寄せるので、リンゴの木、ブロッコリー、ジャガイモ、キャベツなどに混植すると効果があります。

傷寒論辨正(平成14年8月号)

この書は、寛政2(1790)年、中西深斉(なかにししんさい)により書かれた「傷寒論」の解説書です。「傷寒論」は古代中国の医方書で、古くから多くの解説書などがあり、日本だけでも五百書を越える程です。219年に編撰して以来、1800年経つ今でも、『傷寒論は聖人の作であって、万巻の医書ありと云えども、その右に出る医書なし』と名医たちが誉めたたえています。「傷寒論」は当初、「傷寒雑病論」として書かれたのですが、後に「傷寒論」と「きんい金匱要略」に別れました。腸チフスやその類いの急性熱病を"傷寒"と言い、文字通り、寒に傷(やぶ)られて起きる病気の事です。その外感病(外からの原因で起こる病気)に対する処方書が「傷寒論」で、これに対して「金匱要略」は、内傷病(身体の内部の原因で起こる病気)の処方書となっています。「傷寒論」は、中国の伝統医学を基礎とする漢方の書とも言え、現代人が失いつつある知識の活用のエッセンスが込められています。

ローズゼラニウム(平成14年8月号)

薬用部:葉・花 用途:収れん・抗菌・湿疹 原産地:南アフリカ
匂いのするゼラニウムを総称して「センテッドゼラニウム」と呼びます。この中でも特に親しまれている代表的なものに「ローズゼラニウム」があります。ローズゼラニウムという名前はバラの香りがすることから名付けられています。和名を「ニオイテンジクアオイ」と言い、原産地は南アフリカです。高さ30〜100cmに成長し、4〜9月にピンク色の花を咲かせます。寒さには弱いので、霜が降りる前には鉢上げをして軒下に置くか、室内に入れてあげましょう。 ローズゼラニウムの精油には皮膚の弾力を回復する作用があり、美肌への効果を持ちます。女性には素晴らしい薬効ですね。また、葉を利用したハーブバスでは肌をひきしめ、湿疹などに効果があります。料理で使用する際、葉はお菓子に焼きこみ、花は料理に飾るなどして風味と彩りを添えてみてはいかがでしょうか。