カボチャ(平成27年9月号)

カボチャの種類を大まかに分けると、日本カボチャ・西洋カボチャ・ペポカボチャの3種。歴史はとても古く、ペルーでは紀元前4千〜3千年の出土品から種が見つかっています。カボチャの名前は、カンボジアの産物として日本へ伝えられたことに由来するそうです。 国名にちなんで爛ンボジアの瓜瓩噺討个譴討い燭里、いつしか、カボチャへと。 戦国時代、九州にもたらされたのが始まりとされています。長期保存がきくため、輸入食品が入ってくるまでは、冬の貴重な食物でした。
現在、一般的に流通しているのは西洋カボチャ。 1960年代頃までは日本カボチャが食卓の主流でしたが、食生活の欧米化や嗜好の変化によって、西洋カボチャの需要が急増しました。種子の生薬名が「南瓜子(ナンカシ)」。 産後のむくみや糖尿病の改善などに用いられ、粘膜や皮膚を強くし、風邪を予防する効果も。「冬至にカボチャを食べると風邪を引かない」ということわざは、先人たちが未来の者たちへ語り継いだ大切な知恵であり、深い思いやりなのでしょう。

オミナエシ(平成27年9月号)

生薬名:敗醤根/ハイショウコン 敗醤草/ハイショウクサ
薬用部:根・全草    用途:消炎・鎮静など 
暑さの残る毎日ですが、暦の上では秋。その気配を伝えてくれるのが秋の七草の萩、葛、撫子、藤袴に桔梗、そして女郎花/オミナエシ。オミナエシは草丈1mほど、黄色い小さな花をたくさん咲かせます。女性が食べていた粟飯に黄色い花が似ているので、「オミナ=女」「エシ=飯」がなまって「女郎花」と名付けられたとか。
美しい花ですが全草と根からは鼻をつまみたくなるような何とも言えない匂いがします。この部分は敗醤草・敗醤根という生薬で、消炎や鎮痛の効果があります。 よく似た姿で、少し大きめの白い花が咲くのは「男郎花/オトコエシ」。
吹く風にゆらゆら。ふたつの花は、仲睦まじく寄り添って花を咲かせることでしょう。

アカザ(平成27年8月号)

七福神(しちふくじん)の神で、頭が長く白髪で、杖を握りしめている寿老人(じゅうろじん)。種々の病を治し、冨や長寿を授けてくれるという寿老人は、老子(ろうし) の化身とも言われています。 団扇(うちわ) と巻物を付けた杖を突き、中国における彼は、黒い鹿を連れているそうです。 彼の長い命を記録した巻物と1500年も生きているという鹿が、延命を授けてくれるのだとか。
彼の象徴でもあるごつごつした杖は 「アカザの杖」で、アカザは日本のどこにでも自生しています。背丈が伸び、太くなった茎をしっかり乾燥させれば、立派な杖に。 しかし、今では杖として用いられることは少なく、繁殖する前に摘み取られてしまうのだと…。
若葉は美しい赤紫色。 それが健胃、強壮、歯痛などの効果がある生薬、藜葉(れいよう)で生葉の汁は虫刺されに効きます。
「アカザの杖」 一振りで、寿命が延びるのであれば。そんな想いもあって、松尾芭蕉や水戸藩の徳川光圀公は愛用していたのかも知れません。いつまでも、どこまでも歩めますようにと…。

ミョウガ(平成27年8月号)

生薬名:ジョウカ 薬用部:花穂・根茎・茎葉・若芽 用途:消化促進 神経痛 生理不順
「魏志倭人伝」にも記されているミョウガ。食用としているのは地下茎からのびた花穂で、花が咲く前が食べごろです。独特の香りには食欲増進、消化促進効果、血行をよくして発汗を促す効果があり、食用だけでなく薬用にも用いられます。ただ、「ミョウガを食べると物忘れをする」という噂も…。これは釈迦の弟子、周梨槃特/すりはんどくの逸話によるもの。修行を重ねたにも関わらず自分の名前だけは覚えられず、名札をかけてもそれさえ忘れてしまう彼。その彼の墓のそばに生えたことから「茗荷/みょうが」と名付けられたのだとか。
ミョウガの鼻に抜けるすっきりとした香りは眠気を覚まし、頭をすっきりさせてくれます。もし周梨槃特がミョウガを食べていたならば、名前を忘れることはなかったのかもしれません。

オニドコロ(平成27年7月号)

長い髭で腰の曲がった海に居る老人が「海老(えび)」、それに対して、野に居る老人が野老(ところ)なのだと。野老(ところ)」は、日本各地の山野にごく普通に見られるヤマノイモ科の多年草。 オニドコロ、ヒメドコロ、タチドコロなど、幾つか品種があります。どの野老(ところ)も根茎が太く、たくさんの細い髭根(ひげね)が出ていることから、髭を蓄えた老人に喩えられます。平安時代の「本草和名(ほんぞうわみょう)」や江戸時代の「大和本草」に収載されているオニドコロ。根茎の生薬名を莵■/ひかい(※かいの字は草冠に解)と言い、消炎や利尿、関節や腰、ひざの痛みなどに用いられます。
毒を有するため、頭に「鬼」が付いた 「鬼野老(おにどころ)」。「鬼」は恐ろしいもの、そして、強いものの代名詞。鬼」の名に恥じない、驚くような効き目と強い力で病を治せますように…

アーティチョーク(平成27年7月号)

薬用部:茎・葉・花部(花托・総苞片) 用 途:動脈硬化・黄疸・消化不良・食欲不振
人の背丈を超える太い茎の先にウロコのような萼をまとった大きなつぼみ。これが赤紫色の花を咲かせるアーティチョーク。ヨーロッパではつぼみのころの萼(がく)や花托(かたく)などを食べる野菜で、ほくほくとした食感と、ほのかに苦みのある味わいが人気なのだとか。この苦味には肝臓の働きをよくし、胆汁の分泌を促す効果があるので、お酒を飲むときに一緒に食べれば二日酔いや吐き気を和らげることができます。 存在感のある大きなつぼみ。食べるにはしっかりと茹で、萼を剥いでと手間ばかり。でも“おいしさ”には、“食べる”までの楽しみも含まれています。みんなで萼を剥ぎ、小さくなるつぼみを見ながらそれを味わう。それがアーティチョークをおいしく味わう秘訣なのかもしれません。

クガイソウ(平成27年6月号)

瑞々しい青葉、そして、蒼くも映る紫の花穂のクガイソウ。咲き群れる花穂を揺らすのは、まだ夏の始まりの風 ―。
高山植物の代表格でもあるクガイソウは、山地や森林の草地に生える多年草です。4〜 8枚の葉が輪生し、それが1本の茎に九段くらいあるので「くがいそう(九階草)」と。のちに和名を付ける際、「階」の字を笠を数える単位の「蓋」に変えたのは、輪生した葉を笠に見立てたのでしょう。
根茎に薬効があり、生薬名を草本威霊仙(そうほんいれいせん) と。花咲く頃に、根を掘り取って用います。 煎じ汁を食間に飲むことで、リューマチ、関節炎、便秘を改善する効果が。
クガイソウが一面に広がる伊吹山。古くより神宿る山として信仰され、室町時代後期には織田信長が薬草を栽培しました。真っ直ぐ1メートルになるまで背丈を伸ばした先に、紫色の花。ひとたびその美しい光景を見てしまうと、また、夏山の頂を目指すのだと…。

マロウ(平成27年6月号)

薬用部:花びら   用 途:喉の痛み・胃炎・鎮咳
花の色は赤紫や薄いピンク。そこから「薄紅葵/うすべにあおい」という和名が付けられているマロウ(コモンマロウ)。マシュマロの原料とされるマシュマロウと同じアオイ科のハーブです。春から夏に大きく育ち、丈は2mにも。そしてこの花を使ったハーブティーは風邪によるのどの痛みや咳、胃炎などに効果があります。野菜として食用できる根や葉にもハーブティーと同じ効果が。
青い色をしたマロウティ。しかし、レモンを一滴落とせば、その水面はたちまちピンク色に。6月の雨空もこんなふうに変えられたなら…雲間から射しこむ一陣の光に、そんな期待をこめて。

レモン(平成27年5月号)

ビタミンCの代名詞でもあるレモン。一番の特徴は黄色の鮮やかさで、19世紀にレモンイエロー(和名: 檸檬色) という絵の具が誕生したほどです。 イタリアのドメニコ・ギルランダイオが描いた「最後の晩餐(1480 年制作)」の食卓の背景には、何本ものレモンの木。ギルランダイオは、「人々を救済」するキリストの象徴として、解毒作用のあるレモンを描いたのだそうです。
原産地はインドのヒマラヤ地方。 日本へ伝わったのは明治の初め頃。 熱海の温泉にて療養中の外国人が、レモンの種をまいたことから始まったとされています。 レモンと言えば、ビタミンC。 その量は柑橘類の中でも群を抜く多さで、肝臓の働きを助け(酵素の生成、活性など)、解毒の効果が。酸っぱさのもとであるクエン酸には、カルシウムの吸収を高め、血流の改善、疲労回復の作用があります。
清涼感あふれる香り、かわいらしいその形で、心まで明るい檸檬色に塗り変えてくれそうな。

スイカズラ(平成27年5月号)

生薬名:忍冬・金銀花   薬用部:葉・花蕾    用途:解毒・抗炎症
くるくると蔓を巻き、どこまでも伸びてゆく、スイカズラ。 白い花は、隣り同士まるで手を繋ぐかのように2つ1組。その筒状の花びらを引き抜き、細くなったところを吸えば花の蜜。口から鼻へと、甘みと芳しい花の香りが広がります。 スイカズラの葉と花のつぼみは解毒や解熱に効果のある生薬。葉は寒い冬でも葉が青々としている事から冬を忍ぶ、「忍冬(ニンドウ)」の名に。
花のつぼみは時間が経つにつれて花の色が白から黄色にお色直しをすることから、金銀花(キンギンカ)といいます。 つぼみの時から寄り添う二対の花は、色が変わのる時も同じ時。そして今日も、仲良く初夏の風に揺られています。

ガジュツ(平成27年4月号)

ショウガ科の多年草でウコンの仲間のガジュツ。後漢から三国時代(220年頃)に記された中国最古の薬物書「神農本草経」においては"上薬:生命を育むもの、長期間飲んで健康を保つもの"に位置付けられています。
一見するとウコンによく似ていますが、違いは根茎に。ウコンの根茎は黄色で、ガジュツはうっすら紫色。その根茎に含まれる三大成分、アズレン、シネオール、カンファー。これらの成分によって、肝機能の改善、健胃、鎮痛や抗炎症などを高めることが。
現在、国内の産地は鹿児島や沖縄、そして種子島、屋久島。諸気を癒してくれる…どこかそんな神秘を感じます。
※諸気:腎気、胃気、宗気(そうき)、衛気(えき)、営気(えいき)など、体をめぐるすべての気のこと

ヤグルマギク(平成27年4月号)

生薬名:矢車菊/シンシャキク  薬用部:花弁 
用途:抗炎症・収斂・利尿・強壮・去痰
4月、暖かな風の吹く先で咲く白、赤、ピンク、 青のヤグルマギク。その名は細い茎の上に丸 く咲いた花が、鯉のぼりの棹の上でくるくる と回る矢車の形に似ていたことから名づけられました。そしてその花びらは薬用にも、食用にも。炎症を抑える効果や傷や粘膜を引き締め保護する収斂効果があり、傷薬や化粧品などに利用されます。 長い長いこの花の歴史。エジプトのツタンカーメン王の棺に納められていた花束。ナポレオンから逃れた幼き皇子たちの心を慰めたヤグルマギクの花冠。その花に与えられた勇気はやがてナポレオンを打ち破り、この花は現在のドイツ国花に。
長い歴史の彼方で風に揺れていたヤグルマギク。可憐な姿は今も昔も変わらないまま―。

タイム(平成27年3月号)

ヨーロッパでは4千年以上も昔からくすりや香料として用いられてきたというタイム。中世ヨーロッパでは「勇気・活動・行動力」の象徴とされ、男らしさを表すものでもありました。数あるハーブの中でも重宝されるのは、殺菌、防腐、抗ウイルスの効果に優れているから。それゆえに、古代エジプトではミイラの防腐や保存剤として用いられ、冷蔵庫が無い時代にはタイムを加えて料理をすることで、保存効果を高めていたと言います。
今でもその活用方法は変わらず、肉や魚の保存剤とされる他、風邪や気管支からの感染症を予防する薬草として使われます。
タイムのお茶でも飲んで、くつろぎのひと時を。妖精たちが集まるというタイム畑のやさしい香りに包まれて…。

アセビ(平成27年3月号)

生薬名:馬酔木/バスイボク 薬用部:茎葉
薬効: ウシ・ウマの皮膚寄生虫駆除、農業用殺虫
寒かった冬もまもなく終わり。花々はつぼみ をほころばせ、まさにこれから春本番。そん な中、白や薄ピンクの花を咲かせるのがア セビ。小さな釣鐘状の花は房をなし、樹を覆いつくすほど。こんなに可愛らしいのに、この木の葉・枝・花には「アセボトキシン」という毒が含まれています。漢字で「馬酔木/あせび」と書くのは馬が誤って食べると神経が麻痺し、酔ったようになるから。もとは「足癈/あしじひ」と呼ばれていましたが、次第に「あしび」「あせび」へと変わったのこと。 しかし毒とくすりは紙一重。葉を煎じたものはウシやウマの寄生虫駆除、または農業用の殺虫剤などに利用されています。 アセビが咲いて、モモやサクラと花の便りが。変わりやすい春のお天気。せめてこの晴天がもう少し続きますように。

アーモンド(平成27年2月号)

古代文明が栄えたナイル、チグリス・ ユーフラテスなどの流域で、既に5千年以上前には食されていたアーモンド。 
ほのかな苦みと甘みが混じり、噛めば軽やかな歯触り。桜と同じころに咲くのは、白や薄紅色の花。 夏へと移る頃、楕円形の実を結び、その殻果(こくか:果皮が乾燥して硬く、種子と密着していない果実)は秋にかけて割れて、中に硬い種子が。これが仁(にん・じん)と呼ばれるアーモンドです。甘い味の甘扁桃(かんへんとう) と苦味の強い苦扁桃(くへんとう) の2種類があり、そのどちらもくすりとして用いられます。甘扁桃から採れる油分は咳や痰に効き、下剤の効果も。また、食物繊維も豊富で、細胞の老化を抑え、動脈硬化を予防する働きもあります。 苦扁桃を蒸留して得られる苦扁桃水は、咳止めに。
日本にやってくるほとんどのアーモンドは、カリフォルニア育ち。 かりりと噛んだ一粒は、遥か異国の 太陽の味 ―。

ネコヤナギ(平成27年2月号)

生薬名:細柱柳  薬用部:樹皮・葉 薬効:解熱・鎮痛・消炎・利尿など
冷たい風にさざめく水面。そのほとりに ひょろりたたずみ、春まだ遠いころ、葉よ りも先に花穂を結ぶネコヤナギ。その花 は滑らかな絹の糸、銀白色のネコのしっぽに似ています。 このネコヤナギなどのヤナギ科植物の樹皮に含まれているサリシン。その効き目は古くから知られており、枝を削って楊枝にし、歯の痛みを和らげるために噛んでいたとか。解熱、鎮痛に効果のある”アスピリン”はこのサリシンから発見されたもの。また、コリヤナギという種類の枝で編んだかごは風通しがよく、湿気やカビを防ぐので「柳行李」の材料に。
花が咲くのはほんのひと時。 でも、“ヤナギ”のくすりは いつも、いつでも…。

サザンカ(平成27年1月号)

落ち葉を掃き集めては、たき火をするのがごく普通だったのは、懐かしくもあたたかな昭和時代のこと。 そして、たき火の向こうにはサザンカが。それが日常の風景であったからこそ、童謡にも歌われているサザンカ。凍てつく寒さの中、凛と咲く美しさ。自生のサザンカの花は白く、花びらは一重。その美しさから園芸品種が多く作られ、花の色は白に桃、紅、斑が入ったものも。花びらも一重だけでなく、八重咲きもあり、数百もの種類があるのだとか。種子から油を採取することができ、ツバキ油として軟膏の材料などに用いられます。
爐燭火だ、たき火だ瓩函楽しげな子どもたちが描かれた歌。北風は冷たく、手の霜焼けは痛むけど、みんなで仲良く輪になって。ゆらゆら揺らぐ橙色の炎の向こうに、真っ赤なサザンカ。ぱちぱちという音を聴きながら身体を温め合えば、心までぽかぽかと…。

ポンカン(平成27年1月号)

生薬名/薬用部: 青皮/未熟果皮・陳皮/成熟果皮   用途:芳香性健胃 鎮咳 去痰
寒い日が続く今、ちょうど食べごろを迎えているかんきつ類。その中でも特に甘みが強いのがポンカン。インド原産、明治時代に日本に伝わってきたこの果実。「ポン」はインド西部の「Poona」という地名、「カン」は柑橘の「柑」から名づけられました。 濃い橙色の皮は厚みの割に柔らかでむきやすいのが特徴。これは生薬、陳皮/チンピ。胃や腸を刺激して消化を助けたり、溜まったガスを出す働きや、咳や痰にも効果があります。また、熟す前の青い実の皮も青皮/セイヒとして、同様の効果があります。
こたつの上のカゴの中には橙色の果実が山盛り。たっぷり含まれるビタミンCは風邪の予防にも効果あり。 今年の冬はミカンだけでなく、ポンカン、伊予かん、八朔といろいろなかんきつ類を味わってみては。

グアバ(平成26年12月号)

熱帯の国に育つグアバ。日本で栽培されているのは沖縄ぐらいなので、まだ珍しい果実と言えそうです。そ の姿は品種によってさまざまで、丸や卵形、洋梨形なども。
魅力の一つは、甘くて爽やかな香り。漢方では、若葉を日干しにしたものは蕃石榴葉(ばんせきりょうよう)、果実を乾燥させたものが蕃果(ばんか)と呼ばれます。カリウムが豊富な蕃石榴葉は、糖尿病、コレステロール、高血圧、動脈硬化などに。ビタミンCを多く含む蕃果には、風邪の予防や肌の美しさを保つ効果があるとされています。
真っ白なグァバの花。花が終わると一本の枝にいくつもの実を結び、大きくなるに連れて、枝は垂れ下がり ます。その重みが、誰かの病いを癒すのだとすれば。優しく摘み取ってもらえたら…。

ジャノヒゲ(平成26年12月号)

薬用部:根の膨大部  生薬名:麦門冬  用途:鎮咳・去痰 
葉を失い、枝だけになった木はさみしげな冬支度。凍えるような 姿のまま、暖かな春をじっと待ち続けます。しかしジャノヒゲは別。 冬でも枯れることはありません。 その名は細長い葉の姿から。夏に白く小さな鐘型の花を咲かせ、 冬には光沢のある青色の実を結びます。その表面を剥ぎ取ると 現れる白い球。それを地面にたたきつければ、ぽぉんと数mも弾 むため、昔の子供たちはこれをおもちゃにしたのだとか。 根のところどころにはまるでヘビが獲物を飲み込んだときのよ うなふくらみ。これを乾燥させたものが生薬、麦門冬(ばくもんと う)で咳や痰の症状に効きます。 あわただしく、かぜをひく間も惜しい12月。まずは体調管理をし っかりと。それでもかぜをひいたなら、麦門冬の出番かも。

コナラ(平成26年11月号)

昭和も半ば頃までは、人びとの暮らしと密接に結びついていた雑木林(ぞうきばやし)。中でもコナラ林からは、焚き木や炭などにするための木材を伐採し、肥料などに使うために落ち葉も集められていました.ところが、燃料は電気やガス、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)に頼るようになったことで、コナラ林の伐採がなくなってしまうことに。薪を日用としていた頃は、樹皮や葉が止血や下痢止めの民間薬であったとか。
葉が夕焼け色に染まる秋だけは、ドングリを目当てに小さな訪問者たちがやってきます。澄み切る秋空に映える、雄大で美しいコナラ。里山の代表樹として景観を作っていたに違いありません。ドングリを拾い集めに来る子どもたちを今年も待っているはずで…。

ツワブキ(平成26年11月)

生薬名:たく吾(タクゴ) 薬用部:茎・根茎 用途:健胃・下痢・食中毒など
朝晩が冷え込むほどに色づく木々。枝は赤や橙の葉をまとい、 おめかしをしているよう。そして足元を見れば、葉を茂らせたツ ワブキ。葉の間から長く伸びた茎の先には菊のような黄色い花 が咲いています。つやつやと光沢のある葉が蕗に似ていて艶 があるから「艶蕗/つやぶき」。それが転じて、「ツワブキ」になっ たとか。 葉や根茎は「たく吾(タクゴ)」という生薬。健胃や下痢など、お腹 の調子を整えてくれる効果があります。皮膚炎や打撲には生の 葉をあぶったものをなど、暮らしの中に息づく使い方も。 多くの草木が眠り始める初冬。黄色く咲いたツワブキの花は、そ んなさみしい風景にぽつりと灯った、暖かな光のようです。

センダン(平成26年10月号)

センダンは温暖な海岸に野生する落葉性の高木で、各地に生育しています。花は初夏。淡紫色、もしくは白色の花をたくさん咲かせます。秋には実を結び、枝一面にいくつもの楕円形の実が垂れ下がります。落葉後も実だけは枝に残り、まるで数珠のようであることから「センダマ(千珠)」と呼ばれたことが名前の由来なのだとか。果実が黄色に熟せば、腹痛などに効く生薬として用いることができ、その名は苦楝子(くれんし)。また、樹皮を苦楝皮(くれんぴ)といい、条虫(じょうちゅう)を駆除する虫下しとして処方されます。種子は鳥によって運ばれるのでしょう。四国・九州・南西諸島・本州でも温暖な河原や雑木林などに、ごく普通に見られます。黄褐色となって、残り枝に数珠成りに下がるその姿を見ていると、わが身をついばみに来る鳥たちを待っているかのようで。木枯らしが吹く前に、遠く暖かな場所へ運んでおくれと…。

サンショウ(平成26年10月号)

生薬名/薬用部:山椒/果実   用途:芳香性健胃、整腸、利尿
ピリリと舌が痺れる辛さと、鼻を抜ける爽やかな香り。鰻の蒲 焼にかけたり、七味唐辛子の“七味”のひとつとしたり、薬味 としておなじみの山椒。これは秋に熟したサンショウの実から 種子を取り去り、果皮を粉末にしたもので、「粉山椒」とも呼ば れます。初夏の熟す前の青い実は「実山椒」、「青山椒」といい、佃 煮にして味わうことができます。とくにちりめんじゃこと炊い たちりめん山椒はごはんとも相性抜群。また、「粉山椒」には、健 胃整腸、利尿、虫下しの効果もあるので、くすりとして用いられ ています。さらに、ゆっくり時間をかけて成長するサンショウの 幹は、年輪の幅が狭く、硬いことからすりこ木としての利用も。 食欲の秋。ついつい食べ過ぎてしまったならば、粉山椒を一振 り。その香りが気分を鎮め、胃腸の働きも促してくれるはず。